月別アーカイブ: 2013年12月

『下流社会 第3章』

三浦展『下流社会 第3章:オヤジ系女子の時代』(光文社新書 2011)を読む。
20〜30代の女性を大きく5つのクラスタに分け、それぞれの生活パターンや趣味から消費動向を探るという内容である。
これまで女性の消費傾向は年齢、未婚・既婚、有職・無職といったカテゴリーのみで分類されてきたが、年収という階層意識ではっきりとした違いが出る男性とは異なり、女性は近年そうした分類ではっきりとした違いが分かりにくくなっている。著者は女性も男性と同様に趣味によって分けることで、ファッションから化粧品、雑誌、休日の過ごし方といった生活の違いが分かると述べる。
この本では若い女性を「文化系」「アウトドア系」「OL系」「手作り系」「オタク系」の5つに分類し、それぞれの消費動向をアンケート調査に基づいて分析している。以前読んだ三浦氏の『下流社会』や『ファスト風土化する日本』に比べ、いささか結論はありきたりなものになっており、新書としてまとまめるのは無理があったのでは。

『西の魔女が死んだ』

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3年ほど前に地上波で放映された、梨木香歩原作、長崎俊一監督『西の魔女が死んだ』(2008 アスミック・エース)を観た。
女の子のグループ同士の付き合いに神経をすり減らした少女が、大自然のおばあちゃんの家で自分を見つめ直し、生きる力を得るという、いかにも文科省お墨付きの少年少女文学賞を受賞しそうな内容である。
しかし、おそらくは原作の持つ心理描写の機微を無理矢理映像で表現しようとしたために、自然描写や田舎の生活純朴な映像が、かえって制作者の意図で塗りつぶされつまらないものとして目に映ってしまう。
想像を制限されてしまう映画よりも、原作で読んだ方が楽しめた作品であろう。

『Summer Nude』

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地上波で放映された、飯塚健監督『Summer Nude』(2003 アルゴ・ピクチャーズ)を観た。
いわゆる「群像劇」と呼ばれるジャンルで、石垣島を舞台に「上り坂」のカップルや「下り坂」の夫婦、そして「まさか」の事件が、8月31日の夜に打ち上げられた花火の下で交錯する。
前半は完全なコメディダッチで、アイドル映画や若手芸人映画のように、役者のことをよく知っているファンが見るような内輪向けの内容であった。しかし、後半は監督の若さがにじみ出てきて、低予算ながら一生懸命な作りが伝わってきた。

「絶叫デモはテロ行為」

本日の東京新聞朝刊一面は、自民党石破幹事長のブログを批判する内容で占められていた。
石橋は11月29日、ブログに「『特定秘密保護法案絶対阻止!』と叫ぶ大音量が鳴り響いています」と書き、その上で「いかなる勢力なのか知る由もありませんが、左右どのような主張であっても、ただひたすら己の主張を絶叫し、多くの人々の静穏を妨げるような行為は決して世論の共感を呼ぶことはないでしょう」と指摘した。さらに、「主義主張を実現したければ、民主主義に従って理解者を一人でも増やし、支持の輪を広げるべき。単なる絶叫は戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらないように思われます」としていた。

特定秘密保護法案に反対する東京国立市の市民グループ「秘密保護法案を考えるくにたち市民の会」のメンバーの一人は「9・11の米中枢同時テロ以降、テロというレッテルを貼れば自分が正しい、ということになってしまう。デモをやっている人たちのこともテロという名で束ねるなんて、むちゃくちゃ」と不安を募らせる。

また、市民団体「原発いらない福島の女たち」のメンバーの一人は「自民党のこうした暴挙に対する抗議の声に、さらに暴言を重ねるなんて、国民をばかにしているとしか思えない」と強く反発した。

さらに、東京新聞一面下のコラム「筆洗」では次のように批判の声を掲載している。

「殺人や破壊行為によるテロと「表現の自由」による市民の主張であるデモを同じに扱うのならば、この国に少なく見積もって数十万人単位のテロリストと「本質的に変わらぬ」人がいるということか。石破さんはそんな国の与党の首脳ということになる。
「糞も味噌も一緒」とはこのことで、国会周辺のシュプレヒコールに石破さんも冷静さを失ったのか、国民の声を敵視してしまっている。
ブログを続けてみよう。「己の主張を絶叫し、多くの人々の静寂を妨げるような行為は決して世論の共感を呼ぶことはないでしょう」。そっくり自民党に言い返せる。その通り、共感は呼ばない

「そっくり自民党に言い返せる」という下りが傑作である。自民党の騒音選挙活動、米軍基地の騒音、騒音だらけの無駄な公共工事などなど、自民党自身の「テロ行為」を棚に上げてよく言い退けたものだ。石破氏は幹事長という立場なのだから、まずは自民党内部から「民主主義に従って理解者を一人でも増やし、支持の輪を広げ」て政策を練り上げてもらいたい。

『グリーン・レクイエム』

新井素子『グリーン・レクエイム』(講談社 1990)を読む。
本日子どもを連れて春日部図書館へ出かけた。案の定、子ども3人が大騒ぎをしでかし、追い立てるように出ようとした出口脇のリサイクルコーナーにあった本である。
1980年に書かれた本であるが、続編と合わせて装丁を変えて出版されたSF小説である。設定が面白くて引き込まれるように一気に読んでしまった。
あとがきが長いが、久石譲作曲の主題曲「Green Requiem」についての逸話が興味深かった。私自身が高校のときに聞いた際のCDの記憶がよみがえってきた。