日本保健医療大学のパンフレット(2014)を読む。
埼玉県幸手市の廃校となった小学校の校舎を改築して2010年に開学した、保健医療学部看護学科のみの単科大学である。ちょうど校舎の真ん前にある武道館に通っていたので、開学を巡った混乱をよく記憶している。
開学して4年目を迎えるのに、未だにパンフレットは開学前の青写真の域を出ていない。学長の挨拶文の1行もなく、実習先の病院もぼかした写真だけで名前はなく、在校生やサークル活動の紹介も全くない。
また、医学部や付属病院もないのに、学費はべらぼうに高く、4年間で6,980,000万円である。この数字もスーパーの安売りみたいで印象は悪い。ただし奨学金制度が充実しており、3分の2近くの学生が最大270万円の奨学金が受けられ、この奨学金も提携グループの病院に4年間勤務すると返済が全額免除される仕組みになっている。
- 勤務地の希望は伺いますが、原則として勤務する病院等については必ずしも御要望に応えることができない場合があります。
- いつも笑顔で愚痴不平を言わず患者さんと良好なコミュニケーションのとれる人が条件です。
- 途中で病院を退職する場合は、残金を全額直ちに返済しなくてはならないので、それが可能な保証人が必要です
具体的な勤務地や病院名が一切記載されておらず、上記の条件をつきつけられるというのはかなり大きな負担であろう。
国家試験取得のための大学なのでカリキュラムはありきたりなものとなっている。1年生に生物、物理、化学の3科目を必修科目として課しているのはよい。ただし基礎系科目の選択科目の一つに「囲碁の文化と思考力開発」という珍妙な授業が置かれているのが気になった。これはこれで面白そうなのだが、果たして受講生がいるのであろうか。
また、底辺大学にありがちな入試概要も掲載されており、AO入試は8月の後半から10回も実施されている。また評定平均値の基準のない推薦入試が5回、さらに1科目入試の一般入試も計7回実施される。これに加えてセンター試験利用入試が4回である。さらに、願書の送付が間に合わない可能性がある時は、事前に大学事務局に連絡の上、当日試験会場に試験開始1時間前までに出願書類一式を持参すれば、その場で受験票を交付し、受験が可能であるとのこと。大学側の親切な対応とみてよいのだろうか。
唯一興味をひいたのが、大学を卒業した看護師の卒業生数の増加のグラフであった。1997年には大学卒業の看護師は1,327人しかいなかったのが、右肩上がりで上昇し、2012年には14,145人と10倍以上も増加している。
パンフレットに知っている卒業生の顔が載っているかなと思っていたが、期待はずれであった。幸手市もどえらいお荷物を抱えてしまったものである。