石田衣良『池袋ウエストゲートパーク』(文春文庫 2001)を読む。
池袋西口を舞台にした若者たちの青春物語である。ミュージカル映画『ウエスト・サイド物語』の世界観を借りたのか、映画と同様にギャング同士の抗争と友情、恋愛が同時並行で進んでいく。ストーリーは強引なのだが、キャラクター一人ひとりの描き方が際立っており、最後まで一気に読んでしまった。
解説の中で、文芸評論家の池上冬樹氏は次のように述べている。これ以上付け加える必要はないだろう。
本書を久々に読み返してみて、あらためて驚いている。
文章はやわらかいし、イメージは新鮮だし、何よりやわらかな感覚が眩しいくらいだ。なんと若々しい小説であることか!
いうまでもないことだが、若々しさは、作者が若いから生まれるものではない。若々しさは、作者が獲得した対象を見つめる視線の強度と、それを正確に表現できる文章力と、さらにその文章を客観視できる鍛錬から生まれる。