本日の東京新聞夕刊に、歴史学者色川大吉氏へのインタビュー記事が掲載されていた。インタビュアーは、東京新聞社の大日方公男氏である。この5年間で4冊の「自分史」を刊行した色川氏は、60年安保について次のように述べる。
日本社会もよたよた歩きの混沌の時代でしたし、僕自身、生活も精神的に苦難の頃だったから、最初の二冊は突き放した三人称で書いた。反安保運動は国民的な盛り上がりを見せたけれど、政党を背後にした総評や大企業の労働組合は日当をもらってデモしていた一方、底辺の労働者たちはみな自腹で参加し、苦しい戦後を生きた恨みを爆発させた。民衆の根元的なエネルギーが国を動かすその光景を目の当たりにしたことが、僕に民衆思想史に取り組む決意と確信を促した。
そして最後に、色川氏は次のように述べる。そのままどこかのパンフレット使えそうな格好いい文章である。
今のグローバルな情報ネット社会では、9・11テロでもリーマン・ショックでも、かつては無関係と思われた事態が否応なく僕らの生活にかぶってくる。次に準備している平成の自分史は、人が社会にどうコミットするかよりも、世界の構造的なありように自分の生存がどの翻弄されてゆくかの歴史記述が中心になる。かつての若者が主役の時代から、今は中高年が前面に登場してきた。中高年は若者以上に社会とつながりたい欲望があり、そのつながりを僕らはどんな歴史に学んでゆけばいいのか、どんな共生の受け皿をつくれば自衛できるのかを考えたい。まだ諦めない、抵抗は続けます。