三浦展『ファスト風土化する日本:郊外化とその病理』(洋泉社 2004)を読む。
タイトルが示すとおり、1990年代以降、郊外や地方に、ファストフードやファミレス、ジャスコなどの大型ショッピングセンターが大量に建設された。それは一見、物に溢れた豊かな「田園都市」を彷彿させるものである。しかし、時期を同じくして、少子化ともの作りの空洞化が進んでいった。そして、特に地方は、その地にあった零細企業や町の商店街、コミュニティが崩壊し、ただ東京に憧れ東京と同じものを消費するだけの人や町に変質してしまった。
地方農村部が郊外化すると同時に、中心市街地の没落すすみ、全国一律の均質な生活環境が拡大していった。その象徴であるジャスコのできる所に犯罪が生まれると著者が述べる。かつては地縁血縁が根付いた地方、もしくは匿名の雑多な都市のどちらかに、自分の居場所を確認することができた。しかし、均質の郊外では、自分の存在を根付かせることができず、自己否定型の犯罪が激増してしまう。
著者は、消費するだけの街ではなく、「働く」という行為を戻せと主張する。
街の中に仕事があるということは、多様な人間を街の中で見るということであり、その人間同士の関係の仕方、コミュニケーションの仕方を知らず知らずのうちに肌で感じるということである。異なる者同士が、仕事を通じてかかわり合い、言葉を交わし、利害を調整し、仕事を進める。それこそがコミュニティがあるということであり、公共空間があるということなのだ。(中略)
住宅しかない郊外住宅地は、消費と私有の楽園である。人は自分の家族とだけつきあい、消費をしている。そこには健全な公共性がない。健全な公共性のない空間で、子どもが社会化することは難しい。
だから、今後必要なのは、街に「働く」要素を再び持ち込むことだ。