大橋未歩『行け!行け!テレビ東京・女性アナウンサー大橋未歩のミホちゃんねる!』(集英社 2006)を読む。
テレビ東京の人気のアナウンサーが番組HPや週刊プレイボーイで書き綴った取材の裏側やアナウンサーの仕事のことについてのエッセーがまとめられている。写真がかわいくてつい手に取ってしまった。
現役ストレートが多い女子アナ業界の中で、彼女は唯一「浪人」を経験している。彼女はその頃を振り返り次のように述べている。
まず「浪人してました」と堂々と言えるようになったこと自体が結構最近のこと。それまでは恥ずかしいという思いが先行してました。だってレンタルビデオ屋さんの会員になろうと思ったら、職業欄に「河合塾」って書くんですよ!? これも悩んだ末の苦肉の策。高校生でも大学生でも社会的な身分として認められるのに、”浪人生”という社会的身分は存在しないことを感じて、なんだか人生のレールを外れた気持ちになりました。だって当時の日記を読み返してみると、「死にたい」とか書いてあるんですよ(笑)今なら声を大にして言います。「お前はバカか」と(笑)。
人の目ばかり気にして、そもそも人生のレールなんてないことは、19歳当時にはわからなかったですよね。現役で合格するにこしたことはないし、決して楽しい1年間ではありませんでしたが、今では声を大にして言える。私にとってはいい経験でしたね。
だからこそ、ジャイアンツの上原投手みたいに浪人出身の人を見つけると、つい親近感がわいて応援したくなってしまいます。浪人時代の苦しさを忘れないためにつけた背番号「19」。日本球界のエースとなった今も、桜の季節はやっぱり思い出しているのかなぁ…。
また、番組の企画で新妻っぽい白エプロン姿やメイド姿になることについて彼女は次のように語る。
よく思うんですが、今の女性アナウンサーにとって”やらされてる感”を出すことってすごく大事だと思うんです。すでに記号と化している”女子アナ”の魅力なんて実は無価値で、価値を見出せるとしたら微妙なバランスの上にのみ成り立っているものだと思うんですよね。アナウンサーである私がメイド服をノリノリで着た瞬間から、着る意味なんてまったく存在しなくなると思うんです。
人気の女子アナ自身が、女子アナは「記号」という存在であると述べるのは、なかなか鋭いことだと思う。そうしたプロフェッショナルに徹し、会社サイドの使命というかサービス精神を意識して仕事しているというのは素晴らしい。