アンパンマンミュージアム
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芥川賞受賞作、庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』(中央公論社 1969)を読む。
日比谷高校から東大法学部へと進学した著者の経歴が色濃く作品に表れている。東京大学の安田闘争により東大の入試中止された1969年の冬が舞台となっている。
主人公の高校3年生の薫君のモノローグで話が展開していく。いわゆる戦後民主主義の団塊世代の最後となる1951年生まれの若者が感じていたであろう時代感の転換を絶妙に描く。
主人公の薫くんは次のようにつぶやく。
いまや、受験生は受験一筋に、そして次いではゲバ棒をとってすべてのインチキくさい知的フィクションを叩きつぶすというのが、ぼ くたち若者をとりまく時代の方向性らしいから。ぼくみたいなのは、だからこの奥さんの言うとおり、下からは学校群、上にはゲバ棒というまさにその間に「板 ばさみ」になった、なんとも馬鹿げたシーラカンスなのかもしれない。
また、下記の三島由紀夫氏の帯の書評が良かった。文語体に驚く。
過剰な言葉がおのづから少年期の肉体的過剰を暗示し、自意識がおのづからペーソスとユーモアを呼び、一見濫費の如く見える才能 が、実はきはめて冷静計画的に駆使されてゐるのがわかる。「若さは一つの困惑なのだ」といふことを全身で訴へてゐる点で、少しもムダのない小説といふべき だらう。