エンゲルス『空想より科学へ』(岩波新書 1946)を読む。
森鴎外の『舞姫』を現在扱っているので、ドイツということで本棚の奥に何年か鎮座していた文庫を手に取ってみた。
エンゲルスは、AだからB、BだからCと、数学の証明を展開するように、資本主義の構造的矛盾から生産手段の国有化を説く。
その結果、従来の一切の歴史は、原始時代を除けば、階級闘争の歴史であったことがあきらかになった、そしてこの闘争しあう社会階 級は常に生産と交換関係の、一言でいえばその時代の経済的諸関係の産物であること、それゆえに、そのときどきの社会の経済的構造が、つねにその現実の基礎 をなし、歴史上の各時代の、法律制度や政治制度はもちろんそのほかの宗教や哲学やその他の観念様式などの全上層建築は結局この基礎から説明すべきものであ るということがあきらかになった。ヘーゲルは歴史観を形而上学から解放して、それを弁証法的にした。--けれども、彼の歴史観は本質的に観念論であった。 いまや観念論はその最後の隠れ家たる歴史観から追放され、一つの唯物史観なるものがここに生まれた。そしてそれは従来のように人間の存在をその意識から説 明する方法ではなく、人間の意識をその存在から説明する方法であった。