本日の東京新聞夕刊の文化欄は、行政学を専門とする牧原出東北大教授の「4年単位で政権評価」と、哲学者梅原猛氏の「宰相の条件」と題する2つの対照的な内容のコラムが載っていた。
牧原氏は、今回の政権交代について「しばしば鳩山内閣の閣僚の発言がもたついている理由に、マニフェストの不完全さが挙げられるが、閣僚経験の不足こそが真の原因である」と述べる。また、民主党が政権入りしてから実現不能と判明した公約について軌道修正を図っていることについて、「これを認めなければ、政権交代を認める意味がない」とする。そして「衆議院の任期一期四年を単位に政権を評価する」ことが必要だと主張している。
一方で、梅原氏は、一国の宰相の条件として次の3点を挙げている。
- 世界の文化、特に自国の文化についての深い理解に裏付けされた品格を備えていること。
- 確固たる政治理念をもち、それを自分の言葉で説明できること。
- その理念を内外の政治情勢を十分に顧慮しつつ果敢に実現する意思と勇気をもっていること。
そしてこの3つの条件を十分に備えていた歴代首相として中曽根元首相を評価している。そして、その返す刀で、鳩山首相は、「友愛」という「安っぽい近代主義の謳歌」に過ぎない政治理念を掲げており、改革を断行するには、③の条件に矛盾すると結論づけている。最後に「鳩山首相には『友愛』というモットーを捨て、強い意志とをもって自己の政治理念を実現する勇気ある宰相になってもらいたい」と注文を付けている。
私は牧原氏の意見に賛成である。9月に政権交代が実現してから僅か3ヶ月である。たったの3ヶ月で、鳩山政権を評価すること自体が間違っている。結果を具に検証しないうちから一国の宰相の是非を判じるという愚挙は、政治改革の真の主体である国民を蔑ろにした見解であると思う。