現在授業で中国古代の思想を扱っているので、坂出祥伸監修『よくわかる 老荘思想』(同文書院 1997)を読んだ。
国や会社を挙げて成長を突っ走ってきたバブル経済が崩壊した後の、日本人の生き方の一つの指南として老荘思想を分かりやすく紹介する入門書である。
元来道家の思想家は、儒家を痛烈に批判する形で自らの主義を説明してきたところがある。例えば、儒家の人間中心主義的な狭いものの見方を否定することで、地球や宇宙という視点から人間や社会を見ることを唱えたり、儒家の教えるあくせく働き続ける生き方を真っ向から否定することで、個人の人生観や価値観を擁護する。
断片的な言葉ではなく、老荘思想の全体像が何となく理解できて面白かった。
すべての答えは、もうあなた自身が手にしているのです。ただ気づいていないだけなんですね。だから、ただ普通に毎日暮らしている中で、本当の自分や幸せは、かならず見つけることができるんです。なぜなら、あなたの中にもうあるのですから。したがって、国家にも、会社にも、宗教にも、何にも頼る必要がないんですね。ただ自分の力だけで、何もかも見つけることができる。それが『荘子』の主張してやまぬ、最も大切な真実なのです。