月別アーカイブ: 2009年2月

『よくわかる 老荘思想』

現在授業で中国古代の思想を扱っているので、坂出祥伸監修『よくわかる 老荘思想』(同文書院 1997)を読んだ。
国や会社を挙げて成長を突っ走ってきたバブル経済が崩壊した後の、日本人の生き方の一つの指南として老荘思想を分かりやすく紹介する入門書である。
元来道家の思想家は、儒家を痛烈に批判する形で自らの主義を説明してきたところがある。例えば、儒家の人間中心主義的な狭いものの見方を否定することで、地球や宇宙という視点から人間や社会を見ることを唱えたり、儒家の教えるあくせく働き続ける生き方を真っ向から否定することで、個人の人生観や価値観を擁護する。
断片的な言葉ではなく、老荘思想の全体像が何となく理解できて面白かった。

すべての答えは、もうあなた自身が手にしているのです。ただ気づいていないだけなんですね。だから、ただ普通に毎日暮らしている中で、本当の自分や幸せは、かならず見つけることができるんです。なぜなら、あなたの中にもうあるのですから。したがって、国家にも、会社にも、宗教にも、何にも頼る必要がないんですね。ただ自分の力だけで、何もかも見つけることができる。それが『荘子』の主張してやまぬ、最も大切な真実なのです。

『とてつもない日本』

今日の東京新聞朝刊の一面トップは、「麻生政権最大の危機」の文字が躍る「中川財務相の辞任」がトップであった。
笑顔が持ち味の麻生総理であるが、最近は厳しい表情が続き、顔色も冴えないようである。マスコミからは揚げ足を取られ、野党の民主党からは厳しく追いつめられ、挙げ句には小泉元総理をはじめ自民党内部からも批判の嵐である。特に今年に入ってから、麻生総理の言動を論っては面白がっているようないじめに近い風潮さえ感じられる。政権与党を批判するのは健全な野党やマスコミの大切な仕事であるが、漢字の読み方や1万2千円をもらうだのもらわないだのといった批判や報道に終始するのは良識を疑う。これからの日本や世界の政治・経済体制を占う中で、麻生内閣のずばり政治理念そのものを骨太に批判してほしいものだ。

そこで、実際の彼の政治哲学はどのようなものかと思い、麻生太郎『とてつもない日本』(新潮親書 2007)を読んでみた。
得意の外交、アニメや漫画など日本のソフトコンテンツだけでなく、高齢化の進展や教育格差、地方政治、北朝鮮問題など多岐にわたる。
高齢化社会を日本の景気回復の起爆剤とする考えや、中学校を義務教育から外すなど、斬新な発想をする高校生の小論文のように自由な語り口が面白かった。戦前は宮内省や陸海軍省の管轄にあった日本赤十字社を認可法人に移行したように、靖国神社を公益法人化し天皇の参拝を提案するなど、政治家としても非常にユニークな考えを持った人物である。
東大・京大出身を否定し、役人をこき下ろしているので、霞ヶ関では評判はよろしくないであろう。確たる政治哲学はないといってもよいのだが、アジア外交重視の姿勢や、個人のライフスタイルや小国の主権に敬意を払った社会や外交のネットワーク作りなど、新自由主義的な考え方とは一線を画している。
経済政策のとりまとめは彼の得意とするところではないだろうが、彼の政治に対しての自由放談をもっと聞いてみたいものだ。

年甲斐もなく……とか、いい年こいて……などといわれても気にせず、学生時代に乗りたくても買えなかったオートバイを六十歳になってから乗り回す。若い人じゃ買えないようなモトグッチとか、ウアンビーンなんていう高級なイタリア製のオートバイを購入して、逃げた女房は忘れて、合コンなんかで知り合った女性を後ろに乗せて、ダンディにツーリングを楽しむ……、そんなことができれば、高齢化社会はバラ色ではないか。

パンフレット研究:千葉科学大学

千葉科学大学のパンフレットを読む。
大学名を聞く限り、幕張辺りにあり、千葉工業大学の亜流的なおしゃれな理系大学であろうと勝手に想像していた。
しかし実際は、イメージとは大きくかけ離れており、全国で大学や専門学校、私立高校を経営する加計グループが2004年に設立した新しい大学で、千葉県の外れの銚子の駅からバスで10分という海岸沿いの大変不便な場所にある。よほど銚子市からの強い要請でもあったのだろうか。
また、学科構成もバラバラで、薬学部と危機管理学部の2学部で構成されている。この危機管理学部は、消防士や警察官を目指す「危機管理システム学科」と、地球環境問題に取り組む「動物・環境システム学科」、臨床検査技師を目指す「医療・危機管理学科」の3学科を擁する。学部としての統一性は皆無である。おそらくは薬学部薬学科だけの単科大学だけでは経営が成り立たないので、薬学部の施設や教員を利用できる学部を併設したのであろう。
法人自体の規模が大きいので、多少の赤字は覚悟の上なのだろうが、存続の危ぶまれる大学であることは間違いない。地元の消防団と連携した学生消防隊という珍しいクラブもあるようだが、他大学との差別化を早急に検討していかねばならないだろう。

パンフレット研究:こども教育宝仙大学

こども教育宝仙大学のパンフレットを読む。
2009年の4月に開学予定の大学のリーフレットを読んでみた。まだ設置認可が下りる前のものなので、詳しい大学の紹介はない。学園そのものは、1935年に設立された仏教保育協会保姆養成所をルーツとしており、70年近い伝統がある学校であり、来年度短大が改組され、幼稚園教諭と保育士の資格がとれる4年生大学へと生まれ変わる。
しかし、リーフレットを読む限りでは、勉強の中身自体は短大や専門学校と大差はない。中野坂上の駅から徒歩5分の至便な場所にあるので、学費に余裕があり、東京生活を思いっきり満喫したいと考える高校生にとっては選択肢の一つとなるであろう。

パンフレット研究:相模女子大学

相模女子大学のパンフレットを読む。
神奈川相模原市にあり、小田急線相模大野駅から徒歩10分の通いやすい場所にある大学である。通称「サガジョ」と呼ばれているそうだ。1900年に設立された日本女学校を前身としており、日本で4番目に古い女子大学である。
大学全体は、日本語日本文学、英語文化コミュニケーション、子ども教育、メディア情報の4学科からなる学芸学部、社会マネジメントと人間心理からなる人間社会学部、健康栄養学科と管理栄養学科で構成される栄養科学部、そして生活デザイン学科と食物栄養学科の短期大学部の計4学部で構成されている。
相模大野のおしゃれなスポットやきれいなトイレなど写真の紹介もあるが、概してオーソドックスな紹介にとどまっている。各学科の紹介ページごとに取得できる資格や進路が紹介されており、「実学」志向の大学の姿勢が伺われる。