月別アーカイブ: 2009年1月

パンフレット研究:東京国際大学

東京国際大学のパンフレットを読む。
埼玉県川越市の外れに位置する霞ヶ関という何やら田舎めいた駅にあり、5学部10学科、5研究科を抱える比較的規模の大きい大学である。情報システム学科を含む商学部、経済学部、英語コミュニケーション学部、国際関係学部、そして、福祉心理学科を擁する人間社会学部の5つの学部で構成されている。特に福祉心理は社会福祉士や精神保健福祉士だけでなく、臨床心理士の資格を目指す道も整っていて環境はよい。さらに大学院は西早稲田にあり、人気も高いのではないだろうか。
比較的新しいキャンパスのためか、施設面でバリアフリーも進んでいるようで、車イスでしか移動できない肢体不自由養護学校の卒業生も受け入れている。
また、米国に東京国際大学アメリカ校を設置し、アメリカ留学プログラムに力を入れている。また、野球場とサッカーグランドをキャンパスからバスで30分の所に新設し、昨年よりプロ野球とJリーグの監督を招聘するなど、生徒募集の目玉作りに力を注いでいる。
おそらくは都心にあれば、武蔵大学や明治学院大学などと同系列の大学として受験生が集まるのであろうが、如何せん川越の外れにあるというのがネックなのであろう。ごちゃごちゃ改革を進めてしまった結果、キレイなキャンパスに少人数ゼミ、就職支援と資格取得講座の充実など、所謂「郊外型大学」と見分けがつか ないてんこ盛りな大学になってしまっている感が否めない。

『わたしたちに許された特別な時間の終わり』

第2回大江健三郎賞受賞作、岡田利規『わたしたちに許された特別な時間の終わり』(新潮社 2007)を読む。
雑誌「新潮」に掲載され、第49回岸田國士戯曲賞を受賞した「三月の5日間」と初めてのオリジナル小説「私の場所の複数」の2作が収められている。両作品とも純文学的な内容で、話者の視点がパチパチと入れ替わっていく。村上龍の『限りなく〜』に似たようなテイストの作品である。
「三月の〜」の方は、イラク戦争が開始されるその前夜に、渋谷のラブホテルに泊まり込み、ひたすらセックスとお喋りに耽る若者を描く。密室のラブホテルで携帯の電源を切り、テレビも付けずに4、5日過ごすと、現実感がいとも簡単に無くなってしまう。途中ホテルを一歩外に出ると、イラク戦争反対の街頭デモが繰り広げられているのだが、二人は現実から切り離されたホテルへとまた帰っていく。海の向こうで始まったイラク戦争からいとも簡単に縁を切ることの出来る日本人の疎遠な感覚が浮かび上がってくる。
「私の場所〜」はつまらなくて途中で読むのを止めた。

『地球が静止する日』

chikyu_movie

子どもをお風呂に入れてからララガーデンへ映画を観に行った。
チェ・ゲバラの映画を観に行こうと思ったのだが、どうやら時間を間違えてしまったようで、チケット売り場に辿り着いた暁には既に本編が始まっていた。仕方なく時間の都合の良かった、キアヌ・リーブス主演『地球が静止する日』(2008 米)を観た。
鉄人28号のような不気味なロボットと一緒に、スーバーマンのような超能力を操る宇宙人が突如空からやってくるというワクワクするようなオープニングで幕は開ける。製作費にさぞ金がかかっているのだから、これからものすごいドンパチ始まるのだろうと観客はハラハラしながらスクリーンに釘付けとなるのだが、話はクライマックスを迎える前に中途半端に解決されてしまい、人類を滅ぼそうと画策した宇宙人の一味は忽然と宇宙へ帰ってしまい、何の説明もないままにエンドロールが流れ出す。
観客の期待感ごと宇宙の彼方に消えてしまい、もやもやした感覚だけが地球に、観客の心に取り残されてしまったような後味の悪い作品である。数年前に観たトム・クルーズ主演の『宇宙戦争』とよく似た作りの作品である。
家に帰ってネットで調べた所、1950年代のSF映画のリメイクだそうだ。キアヌ・リーブスの顔が見たいという人以外は観ない方が良いだろう。いや、もとい、彼の汚名ともなるような作品なので、彼のファンは観ない方が良いだろう。

『犬神家の一族』

年末に録画した、市川崑監督『犬神家の一族』(2006 東宝)を観た。
30年前の映画版と同じ監督・主演コンビで再映画化したものだそうだが、わざわざリメイクをする制作者の側の意図がよく分からなかった。

『孤独のチカラ』

明治大学文学部教授 齋藤孝『孤独のチカラ』(PARCO出版 2005)を読む。
非常に示唆深い本であった。著者の10年間ほどの失意の時代に培った経験から、人は孤独な時ほど力を伸ばすことができるものであり、周囲との協調を図りつつも、積極的に孤独を作りだし、自分のエネルギーを形に変えていく時間にすべきだと説く。
現在、仕事に忙殺されストレスを抱え、親身に心を割ることのできる知人をほとんど持たない私にとって「グサッ」とくる内容であった。さらに、著者は、現在の自分に安住せず、常にクリエイティブで新しいチャレンジを続けるために以下の3つの実践を勧めている。

  1. 内観する(自分の心を見つめる)
  2. 教養という反射鏡を磨く(若いころの読書が大切)
  3. 「日記」を書く(他人の目を意識せず、自分のために書きのこすことが活動のエネルギーであるマグマを作ることにつながる)

また著者は詩人中原中也を孤独界のスターだと述べる。中原氏の「頑是ない歌」を取り上げて、中原氏の孤独を讚えている。現在の私にぴったりとくる歌である。

今では女房子供持ち
思へば遠く来たもんだ
此の先まだまだ何時までか
生きてゆくのであらうけど

生きてゆくのであらうけど
遠く経て来た日や夜の
あんまりこんなにこひしゆては
なんだか自信が持てないよ