明治大学文学部教授 齋藤孝『孤独のチカラ』(PARCO出版 2005)を読む。
非常に示唆深い本であった。著者の10年間ほどの失意の時代に培った経験から、人は孤独な時ほど力を伸ばすことができるものであり、周囲との協調を図りつつも、積極的に孤独を作りだし、自分のエネルギーを形に変えていく時間にすべきだと説く。
現在、仕事に忙殺されストレスを抱え、親身に心を割ることのできる知人をほとんど持たない私にとって「グサッ」とくる内容であった。さらに、著者は、現在の自分に安住せず、常にクリエイティブで新しいチャレンジを続けるために以下の3つの実践を勧めている。
- 内観する(自分の心を見つめる)
- 教養という反射鏡を磨く(若いころの読書が大切)
- 「日記」を書く(他人の目を意識せず、自分のために書きのこすことが活動のエネルギーであるマグマを作ることにつながる)
また著者は詩人中原中也を孤独界のスターだと述べる。中原氏の「頑是ない歌」を取り上げて、中原氏の孤独を讚えている。現在の私にぴったりとくる歌である。
今では女房子供持ち
思へば遠く来たもんだ
此の先まだまだ何時までか
生きてゆくのであらうけど生きてゆくのであらうけど
遠く経て来た日や夜の
あんまりこんなにこひしゆては
なんだか自信が持てないよ