月別アーカイブ: 2008年11月

『広島長崎修学旅行案内:原爆の跡をたずねる』

せっかくヒロシマを訪れたので,思い出を深化させようと一冊本を手に取ってみた。
松元寛『広島長崎修学旅行案内:原爆の跡をたずねる』(岩波ジュニア新書 1982)のヒロシマの章段を中心に読む。
高校生向けの本で平易な文章なのであるが,かなり難しい哲学や反戦運動の論理を含んでいるのでしばらく本棚に眠っていた本である。原爆慰霊碑の「過ちは繰返しませぬ」の主語の問題や,広島の軍事拠点のしての機能,原爆を冷戦の始まりと捉える視点など,1945年8月6日の午前8時15分に投下された原爆の因果を多角的に論じつつ,「被爆体験の継承」の意義が述べられている。著者は原水協の関係者なのだろうか,共産党に近い主張が繰り返される。
あとがきで,著者は次のようにまとめている。

ヒロシマ,ナガサキの思想というようなことがよくいわれますが,それは,被爆体験をその絶対主義から解きはなって,現代の状況のなかに正確に位置づけるところから生まれると思いますし,そこからは,被爆者の運動を,他の戦災者や戦争被害者の運動と連帯させ,さらには公害反対運動などの地域住民運動と連帯させる可能性も大きく開かれてくるのではないかと思います。

広島・大阪

仕事の都合で,広島・大阪方面に出張で出かけた。

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世界遺産にも認定されている原爆ドームを初めてみての感想は,都会のビル群を借景としており,繁栄と滅亡のコントラストが美しかったということだ。「美しい」という表現は適切ではないかもしれないが,建物に対する第一印象は美しいの一言であった。この後,平和記念資料館を訪れた。被爆者の遺品や放射線による後障害の説明パネルなどをじっくりと見た。外国人の姿も多かった。それにしても,これほど戦争の傷跡を後代に伝えることを第一義の目的とした資料館が日本にあったことが不思議だった。

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その夜,これまた世界遺産に登録されている宮島の厳島神社に赴いた。ちょうど満潮の時で,海にうかぶライトアップされた大鳥居の存在感が際立っていた。神社の本殿にも行ったのだが,背後に見える対岸の広島の夜景と一体となった大鳥居の姿が興味深かった。平安時代末に作られたものなのだが,現在の広島市内の夜景を考慮して作られたような趣である。

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翌々日は,大阪のUSJに出かけた。ジュラシックパークなどのアトラクションを楽しんだ。ディズニーランドなどの他の遊園地には見られない,大人が楽しめる工夫が随所に凝らしてある。

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最後の日,USJの近くにある「海遊館」という水族館に立ち寄った。いそいそとコンクリートの建物内を歩き回り,シャカシャカと車で移動する都会人にとって,水の中を悠然と泳ぐ魚の姿には,憧憬に近い感情を覚える。

『大学で福祉を学ぼうとするあなたへ』

淑徳大学社会福祉教育研究会『大学で福祉を学ぼうとするあなたへ』(みらい 2007)を読む。
大学の担当者から貰った大学の宣伝本である。教員個人の社会福祉を勉強していた学生時代の思い出が綴られている。私の社事大での実習担当をお願いした(しかし,事情で途中でキャンセルとなってしまった)教員のコメントも寄せられており楽しく読むことができた。
20年前に,「社会福祉士」という国家資格ができて以来,大学においては社会福祉という学問体系が確立したのは良いが,社会福祉士という資格自体が宙に浮いてしまった経緯が伺われた。

パンフレット研究:川村学園女子大学

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川村学園女子大学のパンフレットを読む。
決して有名大学ではないが,関東大震災の翌年の大正13年に,震災救助活動での経験を踏まえて法人が創立された歴史ある大学である。
英語,史学,心理学科を揃えた文学部,そして幼児教育,児童教育,社会教育学科の教育学部,そして日本文化,観光文化,生活文化の人間文化学部の3学部と大学院で構成される。人文系だけの女子大としてはその学問分野の幅は広い。
パンフレットに「学びの8つのキーワード」と称して,「基礎ゼミナール」「キャリアプランニング」「ライフプランニング」「外国語教育」「クロスオーバー教育」「副専攻制度」「就職支援」「大学院の充実」が掲げられており,良い意味でオーソドックスな大学である川村学園女子大の特徴を示唆している。
我孫子市の外れに位置し,JR常磐線の天王台駅からバスで乗り継ぐ不便な場所にあり,落ち着いて勉強に専念したいと考える女子生徒にはよい環境であろう。

パンフレット研究:明海大学

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外国語学部,経済学部,不動産学部,ホスピタリティ・ツーリズム学部の4学部が千葉県浦安市にあり,歯学部が浦安からかなり離れた埼玉県坂戸市にあるという変則的な大学である。文系学部の浦安と理系学部の坂戸では交流は皆無であろう。沿革を読むと,元々,明海大学は,埼玉県坂戸市に「城西歯科大学」として開学し,バブル期の1998年に浦安市に外国語学部,経済学部を設置したのを機に,浦安の地名にちなんだのか,大学名を「明海大学」と変更したそうだ。

知名度は決して高くはないが,在学生6000名弱の中規模大学である。外国語学部と経済学部はいたって普通なのだが,不動産学部とホスピタリティ・ツーリズム学部が目を引く。現在の建設不況の最中,「宅建」取得を看板にした不動産学部は大丈夫なのだろうか。一方で,ホスピタリティ・ツーリズム学部は,客室乗務員専門学校での授業に高度な英語やコンピューター,産学協同講座やインターンシップなどを加えたもので,学部の理念としては分かりやすい。いかつい学部名さえ我慢できれば,専門学校よりは通う価値がありそうだ。

また,サッカーとヨット,空手の3つのクラブが体育会に所属し,全日本レベルの活動を行なっている。しかし文系学部についてはパッとした売りもなく,歯学部や大学病院経営に金が掛かるので,文系学部の学生から金をかき集めているであろう学内事情が伺われる。