先日、こうの史代『夕凪の街桜の国』(双葉社 2004)という広島の原爆をテーマとした漫画を読んだ。
ヒロシマといっても『はだしのゲン』のような被爆直後の悲惨な体験ではない。現在の東京で何不自由なく暮らす一般の市民が主人公が、ふとしたことで親や祖父母の生き様を追ううちに、現在の東京では歴史の1ページになってしまった戦争や原爆という問題にぶつかる。しかし、その問題とは、原爆について考えれば考えるほど、僅か1世代2世代前の親や祖父母の戦争体験がすっかり風化してしまった(させてきた)「戦後」という問題である。
本作では社会の表面からすっかり消えてしまった戦争や原爆が、人間の血の中に息づいているということを描き出す。子どもや孫の血の中にどこまでも先祖の戦争体験が流れていくという難しい内容である。しかし、軽いタッチで描かれており、高校生に是非読ませたい作品であった。
『夕凪の街桜の国』
コメントを残す