矢崎葉子『マンションを買う女たち』(太田出版 1994)を読む。
仕事も順調で貯金もそこそこありながら結婚の予定がない30代から40代の女性4人がマンション購入を意識し、実際に契約にこぎ着けるまでの顛末を扱ったルポルタージュである。少々古い本であるが、独身女性の関心は近年、服装やアクセサリーだけでなく、インテリアや寺社仏閣、アンチークグッズなどへ裾野が広がっている。そのため、その行き着く先は総合的に自分らしさを表現できるマンションとなるのであろう。広さだけでなく内装や陽当たり、駅からの近さなど、我が家に対するこだわりに、かえって自分自身が振り回されてしまう女性の姿を追う。そうした女性についてノンフィクションライターの著者は次のように述べる。
独身女性がマンションを買うとき、あれこれ選択基準が厳しくなるというのは、「家を買わなければならない」という義務感から解き放たれているからであろう。家族の崩壊劇が珍しいことではなくなり、「家族の絆」という言葉がそらぞらしく聞こえはじめたとき、ファミリーにとっての家は、ある意味で、家族が家族らしく存在するための「幸せのハコ」だ。かたや、独身女性の場合は、自分が住みたいと思う家を選べばいい。
それぞれに、せつなさや困難さはあるけれど、最初から「沽券」にも「甲斐性」にもかかわらない女性たちは、その自由さの分だけわがままになれるのかもしれない。