佐藤幹夫『精神科医を精神分析する』(洋泉社 2002)を手に取る。
著者は養護学校教員を長く務めた経験から、精神科医に対する拭い難い不信感が堆積しており、テレビや雑誌で犯罪者の心理をさも分析的に語り、異常者を意図的に作り出そうとする「タレント精神科医」に強い怒りを覚えるということだ。斎藤環、町沢静夫、斎藤学、和田秀樹、福島章、小田晋のそうそうたる6人に対して堂々と反論を展開する姿勢は評価しても良いだろう。しかし、30頁ほど読んだところで、あまりに一人称的な語り口に嫌気がさして読むのを止めてしまった。もう少し編集サイドで読ませる工夫が必要だろう。
著者が批判の対象としてあげている一人の斎藤学(さいとうさとる)氏は、東京新聞にも連載コラムを持っており、よく目にする精神科医である。犯罪の病理が全て個人の歪んだ心理に求められる、と鮮やかな分析をする人だなと思っていたのだが、少し注意して読む必要がありそうだ。
『精神科医を精神分析する』
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