松岡由綺雄『読ませる二〇〇字文章の書き方:伝えたいことを的確に表現するコツ』(ごま書房 1994)を読む。
400字や800字の文章は比較や考察を通して自分の意見を述べることができる。しかし、200字だと、冗長な言い回しや無個性な常套句を思いっきり省かねばならず、必然的に文章がシンプルになる。著者は200字の文章を練習することで、自分の一番表現したいことを的確に伝える力がつくと述べる。
月別アーカイブ: 2005年3月
卒業生へのコメント
『喜望峰』原稿
三年生のみなさん卒業おめでとうございます。今年も三年生の現代文を中心に授業を担当し、生徒のみなさんから多くのことを学びました。特に、特文・英クラスにおいては、『こころ』『舞姫』『「である」ことと「する」こと』など人間心理、日本社会を抉るような作品を時間をかけて扱うことが出来、現代文担当の冥利につきる一年でした。改めてお礼を述べたいと思います。
評価の定まった古典と違い、現代文は、答えのない答えをどのように練り上げ、どう伝えていくのか、生徒も教員も試行錯誤する教科です。私自身もこの一年、評論文や小説に、半ば楽しみながら、半ば格闘しながら向き合ってきました。教壇の上で、答えを作るのに(取り繕うのに?)四苦八苦していたことも何度かありました。
また、秋から冬にかけての推薦入試に向けた小論文では、自分の無教養を歯痒く思いながら、皆さんの意見に自分なりの考えをぶつけていました。
今後の日本の社会・教育を鑑みるに、大学や専門学校での勉強や仕事上のあまたの判断、引いては人生そのものも、これまでと違って手本の見つかりにくいものになるでしょう。答えのない答えを探す作業は卒業後に必要になってくることです。その中で大切なことは夢をあきらめないことと、自分自身の時間を大切にすることです。
高校時代や大学時代といった青春の一ページは過ぎ去ってしまえば短い時間です。これから浪人する者は前途長く感じているでしょうが、来年の春にはあっという間の一年間だったと振り返ることでしょう。
しかし、その刹那で感じ得た、ぼんやりとした将来像、社会のあり方というヴィジョンが長い一生を支えてくれるものだと、私自身今更ながら感じています。多くの本を読み、雑多な友人と出会い、深く自分と社会を見つめ直してみて下さい
「自分とは何か」――一人の人間にとって、一番なじみ深くかつ一番難しい問いを胸に、卒業後の道を力強く歩んでいって下さい。最後に私の尊敬する哲学者戸坂潤氏の言葉を贈ります。
「で問題は、諸君自身の『自分』とは何かということにある。そこが話の分れ目だ。」
『わからなくなった世界情勢の読み方』
池上彰『わからなくなった世界情勢の読み方』(講談社 2001)を読む。
9.11米同時多発テロのすぐ後に書かれた本で、テロ直後にオサマ・ビンラディン一派に対する戦いを、「新しい十字軍の戦いだ」と口走るブッシュ大統領の単純な世界認識を批判的に取り上げながら、サミュエル・ハンチントンの『文明の衝突』をベースに世界情勢を分かり易く語る。
ブッシュ大統領の語るアメリカ型民主主義か専制的な非民主主義かという二項対立的な世界観は米国に伝統的なものであることを知った。アメリカのトルーマン大統領は1947年3月に「民主主義にもとづく生活か、少数が多数を抑える生活か、そのどちらかを、すべての国民が選択しなければならない」と世界を自由主義という善と共産主義という悪に二分してソ連に対して「封じ込め政策」を実施している。また、ジョンソン大統領は「アメリカの掲げる民主主義は、誰もが望むもののはずだ。それに反対する者がいるとすれば、それは、ソ連や北ベトナムに操られた共産主義者に違いない」と、北ベトナムへの爆撃を開始していく。
コインの裏表で、敵を次々と作り出すアメリカの世界観にはだまされるな〜(ちょっと古いか)