月別アーカイブ: 2004年7月

佛教大学スクーリングテスト

障害児教育原論スクーリングテスト

学齢期の障害児に対する地域支援について検討せよ。
2001年1月15日に文科省より出された「21世紀の特殊教育の在り方について」の中で「教育、福祉、医療、労働等が一体となって障害のある子ども及びその保護者等に対して相談や支援を行う体制を整備すること」と提言されている。また2003年3月28日に出された「今後の特別支援教育の在り方について」の中においても障害種別に対応して設置されている現在の盲・聾・養護学校を障害種別にとらわれない「特別支援学校」とし、教育現場への療育や医療などの関連する分野の専門家の参画、さらには障害福祉圏などとの整合性をもった「支援地域」「(行政間の)部局横断型の委員会」の設定、就学前から学校卒業者までの一貫した相談体制の整備、「個別教育支援計画」の策定などが提言されている。これまでばらばらであった教育、福祉、地域の壁を破って有機的な連携体制の構築が求められている。

最近まで日本では特に学校の壁が厚く、地域や福祉との連携がうまく行っていなかった。文部科学省や厚生労働省、都道府県・市町村の地方自治体の行政の側の連携が欠けていたこともあり、個別の取り組みに終始していた。そのため障害児一人一人のニーズに沿った教育や、人生の各段階を連続して支援する体制が作られてこなかった。
しかし、欧米を中心に「ノーマライゼーション」や「インクルージョン」の考え方が日本に入ってきて、日本でも地域全体で障害児を支えようとする動きが定着しつつある。しかし、せっかくの「ノーマライゼーション」も理念ばかりが先行して具体的な実践が伴わないのが実態である。そこで上記の「今後の特別支援教育の在り方について」の中では、こうした地域と教育、福祉の連携の構築の責任者として「特別支援教育コーディネーター」の位置づけを提起している。この「特別支援教育コーディネーター」とは、「特別支援学校としての地域での役割を踏まえ」た「関係機関の連絡調整」を担うものとされている。つまり内々に問題を処理しがちな学校の閉鎖的な壁を破り、養護学校卒業者の就労の確保の取り組み、地域の社会福祉協議会や地域団体や福祉施設との連絡、相談、支援のパイプ作りが期待されている。
具体的に、放課後に障害児を預かる「レスパイトサービス」や障害児学童保育との障害児の連絡、障害児移送サービスやグループホームとの連携、地域のスポーツ少年団やボランティア団体とのより一層の交流の進展など、学校と地域、福祉を結ぶ連携体制のコーディネートの実践が要請されている。
とりわけ、LDやADHD、高機能自閉症などの児童生徒への個別の支援教育の充実という方向性を鑑みるならば、授産施設やグループホームなどのハード面、そしてデイケアサービスや在宅介護などのソフト面の充実は急務である。

障害児教育原論板書事項

障害児教育原論
2004年7月21日〜24日
吉利 宗久
山口 洋史

特別支援教育の動向と世界の特殊教育〜インクルージョンの視点から

「学校基本調査」より
学齢児に占める盲・聾・養護学校の在学者 16,353万人
そのうち特殊教育諸学校(小学部・中学部)在学者→0.42%
特殊学級在学者→0.63%
通教による指導対象者→0.23%
合計1.29%

「特殊教育」から「特別支援教育」へ
2001年省庁再編に伴い、文部省特殊教育課から文部科学省特別支援教育課へ改組
2001年1月15日「21世紀の特殊教育の在り方について」
2003年3月28日「今後の特別支援教育の在り方について」

特別支援教育とは?

特別支援教育とは、従来の特殊教育の対象の障害だけでなく、LD、ADHD、高機能自閉症を含めて障害のある児童生徒の自立や社会参加に向けて、その一人ひとりの教育的ニーズを把握して、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するために、適切な教育や指導を通じて必要な支援を行うものである。

その中で特徴なのが、「従来の特殊教育の対象の障害だけでなく、LD、ADHD、高機能自閉症を含めて障害のある児童生徒」を対象とする「新しい」障害児への取り組みが、特別支援教育の大きな柱になっている。この新しい対象児は文科省の調査では6.3%、約67万人と推定され、現在の障害児教育を受けている子どもたちの4倍以上の数にのぼる。

LD(学習障害)とは?

学習障害とは、基本的には全般的に知的発達に遅れは無いが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。
学習障害は、その原因として、中枢神経に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。(学習障害に関する調査研究協力者会議1999年最終報告)

ADHD(注意欠陥多動性障害)とは?

ADHDとは、年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力及び/又は衝動性、多動性を特徴とする行動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすものである。
また7歳以前に現れ、その状態が継続し、中枢神経に何らかの要因による機能不全があると推定される。(文科省「今後の特別支援教育の在り方について」)

高機能自閉症とは?

高機能自閉症とは、3歳位までに現れ、他人との社会的な関係や形成の困難さ、言葉の発達の遅れ、興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害である自閉症のうち、知的発達を伴わないものをいう。また、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があるものと推定される。(文科省「今後の特別支援教育の在り方について」)

障害児教育の前史
1760年 ド・レペによる世界で最初の障害児学校となった「ろう学校」が設立
される。
1784年 ウ゛ァレンタン・アユイによる世界で最初の盲学校が設立される。
1848年 S.G.ハウによる世界で最初の知的障害学校
1878年 日本で最初の障害児学校である京都聾唖院が設立される。

障害幼児の処遇に関する歴史的経緯

1. 遺棄・殺害
2. 嘲笑・慈悲
3. 保護・救済
4. 社会的な責任の追求(14c〜15c)責任が果たせないようだと懲罰
5. 治療・訓練(18c〜19c)
6. 隔離・収容(19c〜20c前半)
7. 教育(20c半ば)
8. 共生(1981年…「国際障害者年」、1981〜1992年…「国際障害者の10年」)

インクルージョンの歴史

1975年11月29日 アメリカ「全障害児教育法」成立

  1. 3〜21歳のすべての障害のある子どもが対象
  2. 無償で適切な公教育(a free appropriate public education)の保障
  3. 個別支援教育(IEP:Individualized Education Program)の作成義務
  4. 保護者の参加を含む適正手続き(due process)保障
  5. 「最小制約環境(LRE:least restrictive environment)における教育
  6. 差別のないテスト・評価・措置手続き

『金閣寺』

三島由紀夫『金閣寺』(新潮文庫 1960)を10数年ぶりに読み返す。
高校3年生の夏に半分くらいで投げてしまって以来である。吃りの学生僧である主人公が金閣寺に火をつけるまでの心理的葛藤を描いた有名な作品である。高校時分に読んだ時は理解出来なかったが、永遠の美に対する憧憬と日常に去来する欲望に拘ってしまう現実とのギャップに苦しむ姿が多少は飲み込めた。そしてそうしたギャップを解消する手だてとして金閣寺を焼いてしまおうという学生僧の衝動は、梶井基次郎の『檸檬』における丸善の破壊衝動にも共通する青年特有のものであろう。

二条城

昨日慶喜に関する本を読んだせいもあり、午後からの授業の合間を縫って世界文化遺産にも指定されている二条城の拝観に出かけた。大政奉還が行われた間も公開されていたそうで、歴史の一端を感じることが出来た。

nijyoujyou

『最後の将軍』

司馬遼太郎『最後の将軍:徳川慶喜』(文春文庫 1997)を読む。
大政奉還を成した徳川最後の将軍で、教科書にも二条城でのその様子を描いた絵が載っているが、彼自身は将軍職には僅か1年あまりしかおらず、また明治に入ってからは黙りを決め込んだため、彼の政治思想は不詳であった。小説の形であるが、ペリー来航以来一貫して開国の思想を持っていた慶喜が、300年続いた幕藩体制にしがみつく守旧派と、天皇を担ぎ出して攘夷を唱える急進派と、水戸出身者を排撃せんとする紀州・尾張家の幕閣の3者の対立の狭間で、将軍の立場で大政奉還にまで導く生き様は興味深い。「百策をほどこし百策を論じても、時勢という魔物には勝てぬ」と自らの立場を捨てることで丸く収めようとする慶喜の姿は判官贔屓の日本人の郷愁を誘う。