三島由紀夫『金閣寺』(新潮文庫 1960)を10数年ぶりに読み返す。
高校3年生の夏に半分くらいで投げてしまって以来である。吃りの学生僧である主人公が金閣寺に火をつけるまでの心理的葛藤を描いた有名な作品である。高校時分に読んだ時は理解出来なかったが、永遠の美に対する憧憬と日常に去来する欲望に拘ってしまう現実とのギャップに苦しむ姿が多少は飲み込めた。そしてそうしたギャップを解消する手だてとして金閣寺を焼いてしまおうという学生僧の衝動は、梶井基次郎の『檸檬』における丸善の破壊衝動にも共通する青年特有のものであろう。
『金閣寺』
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