井上修『私立中高一貫校しかない!:教育階層化時代のかちぬき方』(宝島新書 2001)を読む。
私立中高一貫校というと東大合格者数を競う進学校のイメージしかなく、公立学校のゆとり教育との対比で括られていたが、90年代後半以降大きく様変わりしているということだ。著者は特に首都圏を中心に、「戦後、ともかく勉強して良い大学に入れば、良い暮らしにありつける、つまり努力次第では階級移動が可能」という大学進学を第一とした「投資型教育」から、「楽しみながら、勉強もし、そして今の良い暮らしを維持してほしい」という「消費型教育」に発展しつつある現状を指摘する。受験にもそれほど苦労をしなかったポスト団塊の世代が親となり、子供にもゆとりを求めているのだ。しかしこれには地域差があり、都心部や田園都市線沿線ではこの傾向が顕著であり、常磐線沿線の千葉、埼玉地域では「投資型」の教育がまだまだ人気があるそうだ。「公立・私立」や「管理・自主」という教育的概念ではなく、「投資・消費」というビジネス的視点で割り切ってしまうのはいささか賛同できないが、特に首都圏での中等教育学校の流れがうまく整理できた。
『私立中高一貫校しかない!』
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