日別アーカイブ: 2002年12月30日

『マイノリティレポート』

本日トムクルーズ主演・スピールバーグ監督の『マイノリティレポート』(20世紀フォックス 2002)を観に行った。
『ミッションインポッシブル』と重なっている場面もあったが、伏線が何本もあり最後まで展開が読めず面白かった。情報ネットワークのデジタルな社会とアナログな人間感情の矛盾というシンプルなテーマのSF映画なのだが、市民のプライベート情報のデータ化や推定有罪に基づく予防社会など、現在の社会状況をうまく延長させた世界が展開されている点が不気味に感じて仕方がなかった。ジョージオーウェルの『1984』の現代版と捉えると、興味深い味わい方ができるはずである。

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『鉄道員』

浅田次郎の短編集『鉄道員』(集英社 1997)を近所のファミレスで読んだ。
途中人目もはばからず涙ぐみそうになった。数年前、高倉健と広末涼子主演の映画の宣伝をテレビで見た際は長編ドラマのようなイメージがあったが、原作は単行本で40ページほどの短編である。かいつまんで言えば、廃線間近の路線の駅長の家族と国鉄の仕事に板挟みになった過去の回想シーンを交えた物語に過ぎないのだが、一つ一つの台詞が大変重いので紙幅以上のドラマが凝縮されて展開される。台詞の少なさという点で、高倉健を駅長役にしたのは妙案であろう。それにしても小説の方は、ちょうど家族と仕事というモチーフといい、北海道という舞台といい、短編ならではのはしょった展開の仕方といい、有島武郎の『小さき者へ』とそっくりである。しかし『鉄道員』は国労闘争団の悲哀とも重なってくるのでより感動が深い。