二つめは遠藤周作『海と毒薬』(新潮社文庫 1960)である。
戦争末期の九州の大学付属病院を舞台とした米軍捕虜の生体解剖事件を小説化した作品である。一人の米軍捕虜を生きたまま解剖実験に処するという極々小さいエピソードであるが、日本人全体の抱える罪の意識の希薄さとと、国家や組織に倫理観すら奪われてしまう日本人の精神的な弱さという問題を読者に突き付けている。この問題はおそらく日本文学全体が避けてきたテーマである。近代以降の文学はそれ以前の封建的な道徳から反発することで展開してきた。夏目漱石や森鴎外こそがその代表例といって良いだろう。・・・これ以降はまだ考えがまとまらないので、後日改めて。
『海と毒薬』
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