井出英策『18歳からの格差論:日本に本当に必要なもの』(東洋経済新報社 2016)を読む。
税制度や再分配の仕組みだけでなく、中間所得層の貧困化による社会分断など、財政だけでなく、アベノミクスがもたらす社会状況について、高校生向けにイラスト入りで分かりやすく説明している。
減税や奇跡緩和グローバル化による景気浮上の行き詰まりや、増税による年金や社会保障の充実が不公平感を偏重しているとの考えから、筆者は増税(特に地方税)によって税収を増やし、その増加分を教育や医療、介護、住宅などの最低限の人間らしい生活サービスのために使うことを提言している。さらに格差を減らすためにベーシックインカム制度の導入を提言している。誰しもが平等に受益者になることが、社会の分断化を抑え、政治に対する信頼を回復する道だと述べている。
「読書」カテゴリーアーカイブ
『築地魚河岸ひとの町』
『東京の地理』
正井泰夫監修『図説 歴史で読み解く! 東京の地理』(青春出版社 2011)を読む。
17世紀前半の江戸幕府成立から東京スカイツリー完成前夜に至る東京の地図の変貌を歴史的流れの中で分かりやすく説明している。
特に日本橋を中心に縦横に張り巡らされた水路や河岸の変遷が気になった。関東大震災や戦後の復興、水運の衰退などで、どんどん埋め立てられてしまい、特に八重洲や銀座周辺の河岸は跡形もない。せめて暗渠になっている部分だけでも開渠に戻すことができれば、ヒートアイランド解消にも寄与するし、景観も良くなるのではないか。
『独立して成功する!「超」仕事術』
晴山陽一『独立して成功する!「超」仕事術』(ちくま新書 2003)を読む。
10年ほど前に購入して、そのまま本棚の肥やしとなっていた本である。
40代後半で中堅出版社の敏腕編集者からフリーの執筆者となった経緯と、独立して仕事を進めていくコツが分かりやすく語られている。
「知的生産」のヒントとして著者があげるいくつかの参考例の中で、気になったところを抜き書きしておきたい。
- 前もって計画できる作業型の仕事と、計画できない創造型の仕事を区別し、何事も計画でがんじがらめにしないこと。
- 仕事を詰まらせないために、進まない仕事を後回しし、進む仕事を最優先すること。そのためには、複数の仕事を並行して進めること。
- 「20-80の法則」を応用し、やりやすい仕事から手をつけ、20%の時間で80%の仕事を終えること。
- ワーク・ライフ・バランスをはかり、仕事と生活のバランスをとり、心に余裕を持たせること。仕事をしていない時の時間を大切にすること。
- 著者も編集者も、書籍は「作品」ではなく、「商品」なのだということを、まず第一に認識すべきだろう。ただ書いただけのもの、作っただけのものは「作品」であって、いまだ「商品」とは言いがたい。読者は鑑賞者である前に、消費者なのだ。読者に対し、額面通りの内容の商品を提供できないようなら、「本が売れない」などという恨み言も、空しく響くだけである。
→これは「書籍」を「授業」に置き換えるならば、教育産業でも通用する。 - インプットは速く、多く。アウトプットはじっくり、手堅く。
本を読むのも、知識のインプットに励むのも、本当の目的は「はてな?」を増やすためなのである。 - 文章から無用な形容詞を消そう。「せめて、かろうじて、ひたすら、かなり、わりと、のような、しがない、せいぜい、さして、あまり、やはり、いっそ、なまじ、どうせ、さすが」などの感情ごは読者にとって目障りになりやすい。
- 終わりから始めよ! 全体から攻めろ!
どこの世界に、例えば、自動車を作る時に、「いけるところまでいこう!」などという製造法をとる会社があるだろうか。本も同じである。仕上がりイメージのない本は、成りゆきで出来た本と言われても仕方ない。
『ニッポンの大学』
小林哲夫『ニッポンの大学』(講談社現代新書 2007)を読む。
海外のマスコミによる世界大学ランキングに始まり、授業への出席率やファッション誌登場学生数、広報活動が熱心な大学、東大出身の教員比率、「朝まで生テレビ!」出演者所属大学、サッカーW杯日本代表などなど、あらゆる大学のランキングが掲載されている。中には大学名の文字数ランキング(1位は大阪河﨑リハビリテーション大学)やテレビ映画のロケ地ランキング(1位は共立女子大学)、新聞の逮捕者報道で名前があがった大学(1位は東京大学)など、あれっと思うようなランキンまで扱っている。
著者には、こうしたランキングで上位の大学を誉めたたえようとか、下位の大学を面白おかしく弄ろうなどという考えはなく、「ランク付け」を通して現在の大学が置かれている社会状況や、大学教育を引っ掻き回す社会的要因について言及している。読みやすい内容で、90年代半ばから10年くらいの大学の変化について押さえることができた。

