地理」カテゴリーアーカイブ

「台湾、米軍駐留認める」

本日の東京新聞朝刊に、台湾の独立志向が強い民進党の蔡英文総統が、米軍が訓練支援目的で台湾に駐留していると認めたとの記事が掲載されていた。
地図を見れば分かるが、台湾の北の沖縄と南のフィリピンには米軍基地が配備されている。さらに台湾に米軍が常駐するようになれば、東シナ海と南シナ海の両方に睨みを効かせられることになり、中国の拡張を防ぐには、地政学的にベストな基地の配置である。

一方、中国の側にすれば、1つの中国であり、自らの領土に勝手に他国の軍隊が駐留するのは、我慢できない事態である。東シナ海、南シナ海とも新期造山帯に属しており、海底に莫大な原油や天然ガスが眠っている。米中のどちらが台湾との信頼関係を構築するのかというのは、東アジアや東南アジアの安全保障だけでなく、将来の周辺国のエネルギー政策も左右する羅針盤となるであろう。

『ウィシュマさんを知っていますか?』

先日の授業で紹介した、スリランカ女性ウィシュマさんと面会や手紙のやりとりを続けた眞野明美さん(写真左)の著書である。ウィシュマさんや支援者たちの命を救うための要望が無視され、段々と衰弱していくウィシュマさんの様子を克明に紹介する。

読み終わった本を図書館に寄贈したので、手に取ってみてください。すぐに読み終わると思います。本を読んだ感想文や、日本だけでなく他国の移民・難民政策に関わるレポートを募集しています。締め切りは期末考査最終日までとします。
フォトジャーナリストの安田菜津紀さんの書評を引用しておきます。

 入管で亡くなったスリランカ人女性・ウィシュマさんが遺した手紙を1冊に!
 名古屋出入国在留管理局=通称「名古屋入管」。〈日本人〉にはおよそ縁のないこの施設の4階には「収容場」があり、2021年3月6日、スリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんがここで命を落としました。いまその死の真相をめぐり、日本の外国人管理政策そのものに疑念が突きつけられています。
 ウィシュマさんは日本語を学ぶために来日した留学生でした。ところが当時の交際相手のDVのため日本語学校に通えなくなり、在留資格を失いました。ほとんど着の身着のままの状態で、助けを求めて警察に駆け込みますが、「不法滞在者」として入管に送致されてしまいます。DV被害者をシェルターではなく入管に引き渡した警察、DVの事実を知りながら収容した入管庁は、ともに法令的にも人道上でも大きな過ちを犯したのです。
 本書では、仮放免後にウィシュマさんの身元引受人となるはずだった著者・眞野明美さん宛に書かれたウィシュマさんの手紙を全て公開しました。収容場の中でウィシュマさんは眞野さんとの平穏な生活を夢み、未来への希望を抱いていました。しかし1月28日夜、吐血。収容場の過酷な環境の中でみるみる衰弱してしまいます。2月2日の手紙には、眞野さんに助けを求める悲痛な叫びが書きつけられていました。
 「彼らは私を病院に連れて行こうとしません。私は彼らに監禁されているからです。私は回復したい。……すべての食物や水も吐いてしまう。どうしていいかわからない。今すぐに私を助けてください。」 眞野さんたち支援者の必死の抗議もむなしく、適切な医療を受けられなかったウィシュマさんは1ヶ月後に亡くなりました。日本の入管施設で収容者が死亡するのは1997年以降24人にのぼります。
 なぜ入管で人間が死なねばならないのか。不法滞在とは死の報いを受けなければならない犯罪なのか。国連人権委員会に「国際法違反」と指摘される日本の無司法・無期限の収容体制こそ裁かれるべき犯罪行為ではないのか──。ウィシュマさんたちの死が問いかけてきます。私たちのことを知ってください、と。

「米国務長官『台湾の国際機関参加支持を』」

本日の東京新聞朝刊に、ブリンケン米国務長官が台湾を独立国と見做し、国連機関などへの参加を支持するように呼びかける声明を発表したとの記事が掲載されていた。中国は台湾を中国の不可分領土の一部だとし、台湾の独立を支持することは内政干渉であるとの立場を崩していない。

日本も第二次大戦後、台湾の方を孫文以来の正当な中華民国だと認めてきた。しかし、1972年に日中国交正常化を果たす際に、台湾こそ中国の一部であるとし、国交を閉じきてきた。現在も日台の間には国交がなく、台湾には日本大使館がなく、日本にも台湾の大使館はない。日本大使館の代わりを台北駐日経済文化代表処が、台湾大使館の代わりを日本台湾交流協会が担っている。

中国と距離的に近く、経済的にも密接な日本や韓国、東南アジア諸国はどう受け止めるであろうか。台湾承認が国際社会の踏み絵となるのは如何なものだろうか。

「スーダン 軍クーデターに怒りのデモ」

本日の東京新聞朝刊に、ここしばらく揺れていたスーダン情勢がまとめられていた。
スーダンは世界史でいうと、1898年にイギリス、フランス両勢力が衝突したファショダ事件が起きた国である。その後、イギリスが第二次世界大戦後まで支配し、1956年に軍事政権が独立国家を建設した。以後、何度も軍事クーデターが繰り返されている。輸出の大半は原油であったが、南スーダンが分離独立後、原油の生産は大幅に落ち込んでいる。2019年の一人当たりGNIは590ドルに過ぎず、同年の経済成長率は-2.5%、物価上昇率は52.37%、失業率は13.3%にのぼる。民主化しても経済再建の道のりは厳しいであろう。

記事には書かれていないが、スーダンは貿易面で中国べったりであり、スーダンの軍事政権を中国が軍事支援している。経済を一手に掌握する軍事政権の方が、貿易相手としては好都合なのであろう。政治問題かと思いきや、中国の一帯一路経済圏構想の拡充に伴う、市場の制圧と捉えた方が理解が早いだろう。

 

「トルコ大統領 欧米など10大使追放指示」

本日の東京新聞朝刊に、何かと騒がしいトルコのエルドアン大統領に関する記事が掲載されていた。トルコは対ロシアとの地政学上、英米仏を中心とするNATO(北大西洋条約機構)に参加してきた。トルコとロシアはクリミア戦争以降ずっと不仲が続いている。また、米国にとってもトルコに米軍基地(インジルリク空軍基地)を堂々と展開することができ、中東に睨みを効かせることができる。

2003年にエルドアン氏がトルコ首相に就任した頃は、イスラム教国のトルコがキリスト教をベースにした欧州連合(EU)へ加盟する話も実現間近だと思われていた。しかし、2014年に大統領に就任して以降は、首相職を廃止して権力を集中し、報道への規制も強化している。今年の8月にはアフガニスタン難民の受け入れをめぐってEUとの対立が激化している。既にトルコ国内には数十万人のアフガニスタン難民が流入しているとされ、国内各地で難民と住民との衝突が生じている。

エルドアン大統領の心中を察するに、民主主義を標榜するNATO陣営やEUが、トルコに移民・難民を巡る問題を押し付けていると感じているのであろう。一方、トルコがNATOを脱退したからといって、すぐさまロシアや中国に与するとも思えない。ではエルドアン大統領はどこへ向かおうとしているのか。誰か説明してくれ!