地理」カテゴリーアーカイブ

「『世界の肺』大豆が破壊」

本日紹介した東京新聞の朝刊記事より。
日本の15倍を超える南米アマゾン川の熱帯雨林が、畜産の飼料となる大豆などの農地転用により破壊されているとのこと。授業の中で、熱帯雨林は面積もさることながら、厚みをみることも大切です。生物基礎の授業で、熱帯雨林の階層構造について学習します。ざっくりと説明すると、

  1. 高木層:太陽光線を直接受ける枝葉が繁る樹木
     4-5mを超える植物の内、概ね8m以上
  2. 亜高木層:4-5mを超える植物の内、概ね8m未満
  3. 低木層:高さ0.8mから2m程度
  4. 草本層:高さ0.8mから1.0m未満の維管束植物(シダ植物と種子植物)
  5. 蘚苔(せんたい)層:5~10cm以下、地表に密着したカーペット状のコケ植物
     に区分けされる

の5層構造となります。この全部が光合成するので、莫大な量の二酸化炭素と酸素の交換が行われています。ステップや亜寒帯は面積は広いですが、植生が乏しく光合成はさほど行われません。一方、熱帯雨林は厚みに注目すると、面積以上にその価値が理解されると思います。

「ハイチ 強まるギャング支配」

本日の東京新聞朝刊に、大地震や大統領暗殺などで揺れるハイチの情勢が報じられていた。
軍隊でも宗教組織でもなく、ギャングが国政を牛耳るというのは、寡聞に聞いたことがない。漫画『北斗の拳』で主人公のケンシロウが訪ね歩く街のようである。

「アフガン タリバン復権3ヵ月」

本日の東京新聞朝刊に、アフガニスタンのイスラム原理主義組織タリバンが政権に復帰してから3ヵ月を迎えた現状を報じていた。

そもそもイスラム原理主義とは、イスラム教の啓典「コーラン」を厳密に字義どおり解釈し、預言者ムハンマドの時代のイスラム共同体を復興させようとするものである。授業でも扱った、イスラム教徒の5つの義務(信仰告白・礼拝・断食・喜捨・巡礼)に基づく生活や政治、経済を目指し、欧米型の人権や民主主義よりもイスラム法による社会を築こうとする。原理主義そのものが危険な訳ではないが、力づくで原理主義を推し進めようとすると、それ以外の勢力を潰そうという発想に陥ってしまう。

ここ30年ほど米国型の金融資本主義が席巻し、世界中で貧富の格差が拡大している。同じ国民、同じ民族なのに、勝ち組の富裕層と負け組の貧困層の差が浮き彫りになっている。国内で負け組が勝ち組に憎悪を抱くようになると国は維持できなくなる。そうした溝を埋めるために、国家や宗教を全面に出した全体主義が鎌首を擡(もた)げてくる。

2001年の9.11米国同時多発テロに象徴されるように、イスラム原理主義が先鋭化した要因は、ウィナーテイクオールなグローバル経済の方にあるのだろう。

「EU 難民殺到で緊迫」

本日の東京新聞朝刊に、中東の難民ら数千人をポーランド国境に送り込んで、難民保護を盾にEUを困惑させようとするベラルーシ・ルカシェンコ大統領の画策に対するEU側の対応が報じられていた。難民を押し付けるという最もくだらないことを仕出かすルカシェンコやロシア・プーチン大統領も問題だが、シリアやアフガニスタンの中東だけでなく、ハイチやエチオピアでも難民の扱いを巡って国同士の衝突が起こっている。授業のプレゼンでも難民・貧困問題を取り上げる班が多いが、これといった解決策がなかなか出てこない。

記事にもあるが、ベラルーシ国内にはロシアの天然ガスを欧州に送る「ヤマル・ガスパイプライン」が通過している。フランスやイギリスを除く欧州の電力はがロシアの天然ガスに頼る部分が多い。ルカシェンコ大統領の「ガスを遮断する」という発言は、欧州の電力危機を煽るだけでなく、資源に頼りっきりのロシアをも刺激するものである。1994年に大統領となって28年目、御歳67歳のやっかいな人物が国際政治を賑わせている。やれやれ。

「タイ『王室改革』訴えは違憲」

本日の東京新聞朝刊に、タイの憲法裁判所で「王室改革」を訴える反体制デモが違憲だとの判決が出たとの記事が掲載されていた。
タイの正式名称は「タイ王国(Kingdom of Thailand)」である。人口7,000万人で、一人あたりのは7,810ドルといった中流国である。

ちなみに一人当たりのGDPが10,000ドル以上の上流国は全体の3分の1ほどである。同3000ドルから10,000ドルが全体の3分の1を占める中流国である。そして残りの3分の1にあたる同3000ドル以下を下流国とみてよいだろう。そのうちの25ヵ国は、一人当たりのGDPが1000ドル以下の貧困国となっている。

さて、そのタイ王国が揺れている。現ワチラロンコン国王の浪費などを追及する学生団体と警察の衝突が繰り返されている。国家財産を私物化する国王とそれを擁護するプラユット政権に対する国民の視線は厳しい。そもそもこの評判の悪いワチラロンコン国王は、王太子時代ほぼ海外で生活しており、2016年の即位後も一年の大半をドイツで過ごしている。土砂災害やコロナ禍で苦しむ本国を見捨てて、海外で優雅に生活する国王を一体誰が支持するのであろうか。