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「ウラン価格が急騰」

本日の東京新聞朝刊に、中央アジアのカザフスタンでの騒乱を受けて、原子力発電所の原料となるウランの価格が急騰しているとの記事が掲載されていた。記事を読むと、騒乱拡大が報じられた日、前日より8%も価格が上昇している。

ウランの埋蔵量に関する情報自体が少なく、ネットを調べてみても古い情報や信憑性の薄い情報が氾濫しており、データもバラバラである。国際原子力機関(IAEA)が発表したデータによると、ウランの埋蔵量は以下のようになっている。カザフスタンは世界第2位の埋蔵量だが、オーストラリアの約半分である。

記事にもある通り、オーストラリアから安定的に供給できるのであれば、日本の大手電力会社でつくる電気事業連合会が出した「安定確保が可能」というコメントは妥当性が担保されたものである。

世界のウラン埋蔵量ランキング

国名 2019年1月現在
kgU
オーストラリア 1,692,700 28%
カザフスタン 906,800 15%
カナダ 564,900 9%
ロシア 486,000 8%
ナミビア 448,300 7%
南アフリカ 320,900 5%
ブラジル 276,800 5%
ニジェール 276,400 4%
中国 248,900 4%

「乾いた風 町ごと焼く 米・カリフォルニア州」

本日の東京新聞朝刊記事より。
昨夏、米西部カリフォルニア州の北部にあるグリーンビルという村で、乾燥した風に煽られ大規模火災が3ヶ月以上も続いたとのことである。

では一体、なぜカリフォルニア州で乾燥するのであろうか。大気大循環の項で中緯度高圧帯(亜熱帯高圧帯)を学習した。赤道低圧帯(熱帯収束帯)と北緯60度付近の亜寒帯低圧帯に挟まれた北緯30度付近は、下降気流が発生することで乾燥気候となっている。また、地軸の傾きにより、北半球でいうと、夏は北緯40度付近が中緯度高圧帯に、冬は北緯20度付近が高圧帯に入る。

イタリアを中心とした地中海沿岸は、ぴったり北緯40度付近に位置するため、夏に乾燥する地中海性気候となっている。でも、南北緯30( ±10度)度付近が全て地中海性気候となることはなく、寒流と偏西風の影響が強い大陸の西側という条件が加わる。共通テストに頻出の地中海性気候は、南緯30度付近の南アフリカ、同じくオーストラリア南西側のパース、北米のカリフォルニア州、南米のチリなど世界各地にある。

さらに北米の西側は環太平洋造山帯となっており、険しい褶曲山脈が聳える。湿った偏西風が山脈にぶつかり、山脈を超えたところで乾いた風が吹きおろすフェーン現象が生じる。カジノで有名なラスヴェガスは砂漠のど真ん中にある。記事にあるカリフォルニア州の北部も標高3000mを超えるシェラネバダ山脈の西側にあり、乾燥度合いが倍化したと考えられる。

ちなみに、日本ではフェーン現象による山から吹き下ろされる乾いた風のことを「颪(おろし)」と呼ぶ。阪神タイガースの応援歌の「六甲おろし」や群馬県の「赤城おろし」が有名。「颪」は漢字ではなく、日本独自の国字と呼ばれる字である。

「永久凍土の街 ロシア・サハ共和国」

本日の東京新聞朝刊に、世界で一番寒い国として知られるロシア連邦内のサハ共和国の温暖化の実態が報じられていた。ケッペンの気候区分では亜寒帯冬期少雨気候(Dw)とツンドラ気候(EF)が入り混じっている国である。

「世界遺産条約50年」

本日の東京新聞夕刊より。
文系私大の入試で地理を使う人は、世界遺産についても押さえておきたい。記事を一読してほしい。なお、共通テストでも世界遺産そのものを問われることはないが、世界遺産に絡めて観光や気候、地形などの出題が増えている。日本の遺産25件はチェックしておこう。

「氷河解け…半世紀ぶりに砂漠に湖が出現」

本日の東京新聞朝刊に、チベット高原の氷河が解けて、チベットから流れ出す河川の流量に大きな変化が生じているとのこと。

チベット高原は、約2,000万年前にユーラシアプレートにインド大陸がぶつかってできた、世界で最も若い褶曲山脈である。日本の面積の6倍近くの広さがあり、平均海抜は4000メートルを優に超える。南縁は平均海抜6000メートル前後となる、中国やインド、パキスタンの国境未確定地域にほど近いカラコルム山脈や、中国とネパールの国境となっているヒマラヤ山脈となっている。インド大陸はユーラシアプレートとぶつかった後も動きを止めず、大陸の間にあった深海の底を9000メートル近く持ち上げたことになる。ヒマラヤ山脈は今でも、年間10mmという驚異的なスピードで成長を続けている。

また、チベット高原は、高原に蓄えられた万年雪や氷河が徐々に解け出すことによって、中国を流れる黄河や長江、東南アジアを流れるメコン川、インドを流れるガンジス川、ミャンマーを流れるエーヤワディー川、パキスタンを流れるインダス川の源流ともなっている。特にパキスタンは乾燥地帯であり、外来河川となるインダス川の豊富な水で古代文明を築いてきた。パキスタンはインダス川の水で米も小麦も生産することができているので、現在人口2億2000万人いるにも関わらず、食料自給率が100%を超えている。

しかし、温暖化によってチベット高原の氷河が一気に融解してしまった場合、大規模な洪水を引き起こすだけでなく、その後の水の慢性的な供給不足に陥ってしまう。稲作にとっては大ダメージである。そうなると、パキスタンだけでなく、人口14億人の中国、インドシナ半島のラオス、タイ、ベトナム、カンボジア、数年後には人口世界第1位となるインドの農業も壊滅である。

地球温暖化というと、南極大陸の氷河が解けて、海面が上昇し、ツバルやキリバス、モルディブなどの環礁の島々が海に沈んでしまうというのは中学校でも学習するところである。しかし、山岳氷河の融解は、地球の人口の半数をしめる5つの河川の沿岸国を死に追いやる。こうしたチベとを中心においた水問題にも注目していきたい。

ちなみに氷は「溶ける」ものだと思っていたが、新聞記事では「解ける」であった。
ネットで調べてみたところ、自然現象で暖かくて氷が自然にとけ出して水になってしまうような場合は「解ける」を用い、人為的行為でお湯やバーナーなどで急速に氷をとかすような場合は「溶かす」を用いる。つまり、「解く」は自動詞として、「溶く」は他動詞として用いるという決まりがあるとのこと。