地理」カテゴリーアーカイブ

「独政治家殺害 極右の影」

本日の東京新聞夕刊に,難民受け入れを積極的に進めてきたメルケル首相の与党CDUに所属する地方政治家が,反難民移民を掲げる極右組織で活動していた男に殺害されたとの記事が掲載されていた。他にも難民受け入れ関わる政治家への脅迫もあり,ドイツ国内で公人を標的とした刑事事件のうち約4割が右翼的な動機によるものだという。

難民・移民の問題は,シリア内戦が落ち着いた後も増加することは間違いない。肝心なことは,難民・移民の理由や出身国の如何ではなく,その国の政治や行政,司法,社会,教育における異文化理解の寛容さである。机上の異文化理解や試験・出世のための国際コミュニケーション力ではない。日常生活のなかで自分の価値判断にこだわったりおしつけたりせず,多様な考えや価値観と共存していくバランス感覚が大切である。

だからこそ,学校生活の中で自分の個性をしっかりと磨く努力と,他人の意見や考えをじっくり聞く(鵜呑みするのではない)ことができる我慢強さの両面を涵養していかなくてはならない。移民・難民問題を第一義的に捉えるべきは学校である。

話は変わりますが,期末考査でドイツの位置関係を尋ねる出題をしました。ドイツはヨーロッパの中心にあり,9つの国と国境を接します。9つすべて挙げることができますか。

「英 イランタンカー拿捕」

本日の東京新聞夕刊を何気に読んでいると,珍しい国の名前が目に飛び込んできた。
ぬあんと,「イギリス領ジブラルタル」とある。記事によるとイベリア半島南端に位置する英領ジブラルタル自治政府が,イランから遠くアフリカ南端の喜望峰を回ってシリアに原油を輸送しようとしたタンカーと拿捕したとのことである。

なぜイベリア半島の南端にイギリス領があるのかというと,世界史受験者におなじみのスペイン継承戦争の講和で結ばれたユトレヒト条約に基づくからである。1713年にスペインからイギリスに割譲されて300年以上経つのだが,あまりに小さく軍事基地の拠点以上の意味合いが無いので,日本ではあまりその存在を認知されていない。面積は6.8平方キロメートルで,東京の狛江市とほぼ同じ大きさである。

話は変わるが,先日イランも加盟する石油輸出国機構(OPEC)の代表と,ロシアのプーチン大統領が共同歩調体制を取るとの報道があった。原油生産量で世界第1位の米国に対して,「敵の敵は味方」戦法である。節操ないと言ってしまえばそれまでだが,近い内にホルムズ海峡付近でなにやら一悶着ありそうである。

地理受験者向けに説明すると,英領ジブラルタルは陸繋島である。つまりは江ノ島や函館,紀伊半島の潮岬と同じく,もともと陸から離れていた島が砂州(トロンボ)によって結ばれて,半島のように海に突き出た形になったのである。
写真を見ると,函館山や江ノ島の”山”を彷彿とさせる。2年生の時の遠足で江ノ島に行った人は分かるでしょう。

ちなみに,陸から鳥のくちばしのように曲がった砂礫を砂嘴といい,そこから「進化」して長く伸びて他の陸地と繋がったのを砂州という。さらに付け加えると,砂州によって外海から隔てられた水深の浅い水域を潟湖(ラグーン)という。潟湖は河川の注入の影響で淡水化傾向にあり,多様な生態系を有することで知られる。

 

「同性愛迫害 難民認定」

本日の東京新聞朝刊記事より。
小さい記事だが,日本政府が,同性愛への迫害を理由に難民認定を出したとの喜ばしい内容である。

入国管理局改め,出入国在留管理庁のホームページによると,「難民」とは,「難民条約第1条又は議定書第1条の規定により定義される難民を意味し,それは,人種,宗教,国籍,特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由として迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために国籍国の外にいる者であって,その国籍国の保護を受けることができないか又はそれを望まない者」とある。

同性愛者というだけで死刑や禁固刑などになる国が70カ国もあるという。そうした国に揺さぶりをかける政治的意味でも,遅ればせながら日本が同性愛迫害を難民認定し,日本で普通に生活を営むことができるようになるというのは評価したい。国内労働力の不足という追い風もあるのだろうが,難民認定の拡大についてきちんと法的整備を積み重ねて行くべきである。

「路線価4年連続上昇」

本日の東京新聞夕刊に,国税庁が発表した相続税や贈与税の算定基準となる2019年の路線価に関する記事が掲載されていた。
札幌,仙台,東京,千葉,神奈川,埼玉,名古屋,京都,大阪,神戸,博多など,ホテルやオフィスを抱えている大都市圏や,金沢や那覇,別府などの観光地を抱えた県は上昇し,高齢化による過疎化が目立つ半分以上の県では下落している。特に福井と和歌山,愛媛で下落幅が大きい。

首都圏への一極集中の一方で,地方における少子高齢の拡大や生産年齢人口の急減といった日本が抱える問題が見えてくる。「どんだけ~」というほどの量的・質的金融緩和をしているにも関わらず,半分以上の県でこの数字である。路線価の下落以上に,日本の人口問題の深刻さが垣間見えてくる。

海洋プラスチックごみ問題 追記

日本近海から出された海洋ゴミは,太平洋を時計回りに流れる北太平洋海流に乗って,カリフォルニア沖合(太平洋ゴミベルト)に溜まることが分かっている。昨日閉幕したG20大阪サミットで,海洋プラスチックごみゼロが首脳宣言に明記されたが,達成目標は2050年!?と30年も先の話である。

3年後に高校で始まる「地理総合」は,基礎的な地球科学の見地に立って自然災害や環境問題を考える科目である。「環境を守ろう!」とスローガンを繰り返すだけのつまらない授業ではなく,系統地理に基づいて持続可能な社会を提言したり,環境負荷を減らす方策を考える実験などの楽しい授業を計画していきたい。