地理」カテゴリーアーカイブ

「外国籍の1万9654人不就学」

本日の東京新聞朝刊に,全国で6歳から15歳の年齢の外国籍の子ども2万人が学校へ通っていないとの記事が掲載されていた。義務教育を管轄する文科省がこうした調査を行い,報告する意義は大きい。
埼玉県でも700名を超える児童生徒が公立の小中学校へ通っていない。本国の中学校を卒業していても,学齢期の生徒ならば小中学校に通って勉強できるので,まずは地元の市役所に相談してほしい。皆さんの周りにもこのような生徒がいたらご連絡ください。

大学の教職課程で「教育基本法」を学びます。日本史の授業でも扱いましたが,戦後の教育の根幹を定めた法律です。日本国憲法とセットで制定されました。
その第4条に「すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない」とあります。国籍はこの中の「社会的身分」に相当します。国籍や保護者の立場の如何を問わず,十全な教育環境を整備していくことが,公立学校の果たす義務となります。

「外国人のための高校進学ガイダンス」

本日,越谷で開催された「外国人のための高校進学ガイダンス」にアドバイザーとして参加してきました。かれこれ10年以上関わっているイベントです。

埼玉県の東部地区でも外国籍の生徒が増えています。中学校までは義務教育なので,日本語能力の如何を問わず,地元の公立中学校に通うことができます。しかし,公立高校に進学するには必ず高校入試を受けなくてはならず,日本語が出来ないと授業についていくことができなくなってしまいます。そこで生徒の日本語能力や保護者の考えも加味しながら,高校進学について通訳を介して説明していきます。

現在,埼玉県では12校の高校で,日本に来て3年以内の生徒を対象とした「外国人特別選抜入試」を行っています。埼玉県東部では草加南高校,三郷北高校,川口東高校などです。また,吉川美南高校や越ヶ谷高校には定時制が設置されており,日本語を学びながら勉強する場もあります。一人ひとりの将来の目標などを聞きながら,勉強方法などを伝えていくのですが,高校生の2者面談や3者面談のような雰囲気で,気疲れもしますが楽しい時間でした。

しかし,高校と大きく違うのは,外国籍の生徒なので,在留資格が関係してくることです。家族状況や日本に来た年齢でも変わるのですが,日本の高校を卒業し,その後進学や就職をすることで,日本に永住できる権利を得ることができます。また,ネパールやパキスタンなどは日本と中学校の制度も大きく異なっているので,すんなりと日本の高校受験の資格が得られるわけではありません。

今後ますます,日本に住む外国籍の方が増えていきます。そうした中で,このような説明会は,高校教員として関わることができる国際交流のひとつだと考えています。通訳なしで直接生徒に語ることができれば,もっと親身に相談に乗ることができるのですが,その点が残念でなりません。今回,中国語,タガログ語,スペイン語,ポルトガル語,英語を母語とする生徒が参加していました。
皆さんも,ぜひこれらの言語を学んで,いつか一緒に説明会に参加しましょう。

「アフリカ会議 首相が中国牽制」

本日の東京新聞朝刊に,昨日のアフリカ開発会議の席上で,安倍首相が日本企業のアフリカへの進出を促すとともに,アフリカへ過剰投資を行なっている中国を批判したとの記事が掲載されていた。

そもそもアフリカ開発会議(TICAD)とは何ぞや。
外務省のホームページによると次のように紹介されている。

TICADとは,Tokyo International Conference on African Development(アフリカ開発会議)の略であり,アフリカの開発をテーマとする国際会議です。1993年以降,日本政府が主導し,国連,国連開発計画(UNDP),アフリカ連合委員会(AUC)及び世界銀行と共同で開催しています。2016年8月27~28日には,ケニア・ナイロビにて第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)が開催されました。同会議は,初めてのアフリカ開催であり,日本からは安倍晋三内閣総理大臣が出席し,ケニヤッタ・ケニア大統領(開催国),デビー・イトゥノ・チャド共和国大統領(AU議長)と共に共同議長を務めました。次回TICAD7は,2019年8月28日~30日に横浜で開催されます。

2019年現在,世界人口77億人のうち,アフリカの人口は13億人と推定されている。つまり,世界の6人の1人がアフリカ大陸に在住している。また,世界の人口は2030年に85憶人(10%増)、2050年には97憶人(26%)、2100年には109憶人(42%)に達すると予測されている。その増加分の8割がエジプトやコンゴ民主共和国,エチオピア,タンザニアなどのアフリカ諸国が占めるとの予測されている。つまり,今世紀末には世界の3人に1人がアフリカ諸国ということになる。

新規投資も良いが,アフリカにはコンゴ盆地の熱帯雨林や石油資源,レアメタルも埋蔵されており,乱開発が進んで過耕作や過放牧による砂漠拡大などの環境負荷の側面も考慮に入れたい。

「移植ツーリズム 国際非難の的」

本日の東京新聞朝刊に,富裕国の患者が貧困国に渡航して臓器移植を受ける「移植ツーリズム」なるものの記事が掲載されていた。

地理Bの教科書には,「エコツーリズム」や「グリーンツーリズム」などが紹介されています。また戦争や弾圧の史跡を巡る「ダークツーリズム」,地層や地形を巡る「ジオツーリズム」などもあります。さらには美容整形や歯科治療を目的とした「医療(メディカル)ツーリズム」も生まれています。

この記事にある移植ツーリズムも医療ツーリズムの一つとも言えるが,臓器ビジネスに絡むだけに,観光業という視点から論じることは出来ない。

「グリーンランド買収意欲認める 米大統領」

本日の東京新聞夕刊に,トランプ米大統領がデンマーク領グリーンランドの買収に動き出すとの記事が載っていた。
グリーンランドというとカナダの北部にあり,メルカトル図法(地理選択者は正角図法と覚えておこう)では,実際以上に歪が拡大されて表現されてしまう世界最大の島である。俄には信じられないが,赤道上のコンゴ民主共和国よりも小さい国である。

トランプ大統領が買収するということで,対ロシアとの緊張が高まるのではとの懸念が指摘されるが,人間が居住できる(エクメーネ)のは沿岸部のわずかな地域のみで,内陸の大半はアネクメーネとなっている。アメリカはルイジアナやアラスカなど買収によって領土を拡大してきた歴史があり,グリーンランドが51番めの州となっても不安こそあれ,違和感はない。

むしろ,グリーンランドがデンマーク領だという方が違和感が強いのでは。北海の資源を巡って新たな火種を作るのであれば,いっそのこと国際共同管理とし,グリーンランド西北部のカーナークに駐留するチューレ米空軍に撤退を頂くというのは如何であろうか。