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「ソマリアで爆弾テロ」

本日の東京新聞朝刊に、「アフリカの角」と呼ばれたアフリカ東部のソマリアの政情に関する記事が掲載されていた。ソマリアはアフガニスタンやイラク、シリアなどの中東諸国とよく似ている。両国とも、19世紀から20世紀前半にかけては、ヨーロッパ列強の帝国のご都合主義により、宗教や民族を無視して勝手に国境が引かれ、冷戦の時には社会主義で旧ソ連の影響を受ける。そして、冷戦後は国境も経済もボロボロになったところに、部族同士の争いやイスラム原理主義が台頭し、さらに米国のお節介外交により、米国の武器を国内に多数滞留し、国内政治がぐちゃぐちゃにされてしまう。

ソマリア内戦に介入した米軍を描いた『ブラックホーク・ダウン』(2001 米)という映画がある。アカデミー賞も受賞したので、ネットで検索すれば出てくる。冒頭、国連の援助物資すら安全に届けられないシーンが今も印象に残っている。

2009年から現在まで、日本はソマリア海沖の海賊対策として海上自衛隊を派遣している。スエズ運河や紅海を航行する船の安全を守ろうと、ソマリアに隣接するジブチを拠点に活動を継続している。これはソマリア政府の要請による国連安保理決議に基づくものだが、安保理では海賊を押さえ込むために、海上だけでなく、陸上や空の監視も決めており、自衛隊が巻き込まれる可能性は否定できない。

宗教や部族が絡んだ内戦は、他国が安易に関わると余計に問題を悪化させる。日本政府は自衛隊の活動を、航行の安全確保を目指す国連平和維持活動に限定するべきである。

「国連制裁の船 拘留せず」

本日の東京新聞朝刊に、国連安保理で制裁されている北朝鮮の石炭密輸に関する記事が掲載されていた。詳細は記事に譲るが、北朝鮮国内には、石炭だけでなく、鉄鉱石や燐灰石、マグネサイト、ウランなど、200種類を超える有用鉱物が確認されている。また、近年とみに価値が高まっている希少金属のタングステン、ニッケル、モリブデン、マンガン、コバルト、チタニウムなども豊富との情報がある。こうした鉱物資源が北朝鮮の核・ミサイル開発の資金源となっているとのことで、国連決議が発動されている。

地理的に言えば、朝鮮半島は安定陸塊に属している。安定陸塊とはまだ植物が地上に繁茂する前の先カンブリア時代からほとんど変わらない地域である。そのため鉱産資源が発掘しやすい。石炭は植物由来のため、植物が地上で栄枯盛衰を繰り返した6億年前から2億5千年前に造山運動で形成された古期造山帯に多く見られる。北朝鮮は安定陸塊に位置しながら、石炭が偏在する地域となっている。

北緯38度線を挟んだ一方の韓国は、同じ安定陸塊にありながら、日本と同様にほとんど鉱産資源に恵まれない。そのため、原材料を輸入し、製品として輸出する加工貿易を産業の中心としてきた。

資源に恵まれた国であるがゆえに、私腹を肥した独裁政権が蔓延る例は、中東やアフリカ諸国でも散見される。生まれつきの財産や身分、美貌に恵まれても必ずしも成功しない人間に擬えることができるだろうか。

「昆虫食 お菓子で気軽に」

本日の東京新聞夕刊に、群馬県の高崎経済大学の学生が昆虫食の開発を手掛ける企業を立ち上げたとの記事が掲載されていた。
タイ北部やラオスでは、すでに昆虫食が庶民に必要な栄養素を含んだ食品として普及している。いよいよ日本でも昆虫食が環境問題と相まって、注目されていくのであろう。もともと日本で高度経済成長まではイナゴや蜂、蚕のサナギなどを食べる習慣が残っていた。しかし、食の欧米化に伴い廃れていった歴史がある。

先ほど、牛肉は生産するのに環境負荷が大きいということを書いた。そこで、ある昆虫食を販売する企業のサイトを見たところ、タンパク質1kgを生産するのに、鶏は300gの温室効果ガスを排出する。豚は1,130g、牛に至っては2,850gものガスを排出とある。しかし、コオロギ はわずか1gである。

日本ではコオロギ というと、あまり良いイメージがない。しかし、人口爆発によりタンパク質不足が叫ばれる中、日本の高い食料技術を活用し、官民一体での取り組みが求められるのでは。

「細胞から培養 牛ステーキいかが」

本日の東京新聞夕刊に、イスラエルの企業が牛肉を細胞培養から作ることに成功し、数年後の商品化に向けて研究開発を進めているとの記事が掲載されていた。細胞から培養された肉というと、何やら手塚治虫の漫画のワンシーンを思い出すが、意外とすんなり受け入れられるような気がする。

農林水産省発行のパンフレットによると、牛肉1kgを生産するのに穀物は11kg必要となる。豚肉1kgに対し穀物7kg、鶏肉は同4kg、鶏卵は同3kgの穀物が必要とされる。先進国の金持ちが牛肉を味わう光景は、開発途上国で飢えに苦しむ子どもの姿と裏表の関係である。牛肉は環境負荷が大きく、世界でも一部の人しか口にできないものだという点は忘れてはならない。日米貿易協定により、今後ますます安価な牛肉が輸入されるが、賢い消費者は生産過程にも注目しておきたい。

独立行政法人農畜産業振興機構のホームページによると、2017年現在、米国には乳用や繁殖用も含め9358万5000頭の牛がおり、3年連続で増加している。特にテキサス州では前年比4.2%増の1230万頭を数える。こうした莫大な数の牛が吐き出すメタンガスがもたらす温暖化への影響は計り知れない。

「ブラジルの恵み 現地に還元」

本日の東京新聞夕刊に、ファスナーで知られるYKKグループがブラジルの自社農園で栽培したコーヒー豆を使い、国内でカフェを運営しているとの記事が掲載されていた。

同社では「他人の利益を図らなければ自らも栄えない」とする創業者の経営哲学に基づき、ブラジル進出で得た利益を現地での地域貢献に生かそうと、農場経営と農場で働く人の生活環境の向上に取り組んでいる。

その中心的役割を果たした同社の八木さんは、土地が痩せていたため、コーヒー栽培の前に大豆を植え、牛を飼育し、有機物を土に混ぜて土壌改良を進めたとのこと。この点について少し解説を加えたい。

そもそも、ブラジルの大半はは安定陸塊に属し、古い玄武岩が風化した粘土質のテラローシャや、赤道付近は鉄やアルミニウムが残留した赤土のラトソルといった痩せた土壌に覆われており、農業には不向きな土地である。

しかし、大豆の根には窒素をアンモニアに変換する根粒菌(バクテリアの一種)が共生し、植物が育つための微生物環境を醸成する機能がある。それに畜産を加えることで、植物に最適な土壌を作るというのは、ヨーロッパの混合農業の手法である。日本では火山噴出物からなる鹿児島県・シラス台地で、同じようにマメ科の作物と畜産を加えた農業が普及している。

八木さんの実戦は農業の基本に沿ったものとなっている。現在では年間60トンもの収穫があり、採算ベースに乗ったフェアトレードの一環として評価したい。