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「ナチスの手口」

本日の東京新聞朝刊に連載されている「本音のコラム」で、山口二郎法政大学教授のコメントが良かった。

安倍首相は9月28日に臨時国会を召集し、冒頭に解散を行うと各紙は伝えている。これはナチスの手口を想起させる。

まず、ナチスの手口をいう流れが、ナチスの手口に酷似しているという。1933年のドイツ国会議事堂放火事件を共産主義者の放火だと喧伝し、翌週の国会選挙で過半数近い議席を得て、全権委任状を成立させ、独裁を始めた。国民に恐怖と憎悪をあおり、思考停止状態に追い込んで選挙を行って勝利するのがナチスの手口である。

もちろん、日本では国会が物理的に破壊されているわけではない。しかし、国会を開いても一切の議論をさせないまま解散するのは、国会の機能を破壊する行為である。また、首相は北朝鮮のミサイル発射に際して効果不明の警音を発して国民をおびえさせ、国連演説を国内向けの北朝鮮非難のプロパガンダに利用した。そのタイミングにあえて解散総選挙を設定しようとしている。これはナチスの手口に近い。

北朝鮮危機を収拾することは政治の急務であるが、力による解決を志向するのか、政治的解決を探るのかについては、国際社会同様、日本国内においても論議があるべきである。そうした議論を一切押し流すのが、今回の解散である。

幸い、日本にはまだ自由がある。我々は判断力を保たなければならない。

「紛争激化で利益増 疑問」

本日の東京新聞一面は、公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、軍事部門の売上高が世界で10位以内に入るすべての企業の株式を保有しているとの内容だった。10社の中には、ミサイル防衛システムやステルス戦闘機F35を製造するロッキード・マーチン社や垂直離着陸輸送機オスプレイの開発を担ったボーイング社、巡航ミサイル・トマホークの製造元であるレイセオン社などが含まれる。

趣旨がずれてしまうのだが、解説の記事の構成が、小論文の見本のようなものであった。起承転結の4段落構成をきっちりと遵守しており、指導の材料に是非使ってみたい。

公的年金は、高齢者の生活を支える社会保障制度の中核。積立金を確実に運用して、利益を上げることの重要性は疑いない。だが、それだけでいいのか。

GPIFによる株式保有が判明した軍事関連企業が本社を置く欧米の国々は、過激派組織「イスラム国」(IS)の掃討作戦に有志国連合として参加するなど紛争に直接関わっている。

各企業は紛争が激化するほど武器や装備品の売り上げを伸ばし、株価を上げる。株価が上がれば、GPIFの運用益も増える。

増え続ける高齢者を養うための年金積立金が、国民の知らないうちに「軍事支援」に転用されている構図は、倫理上許されるとは思えない。

現行法では、政治的な介入や担当者の恣意的な運用を防ぐため、業種を問わず企業株を自動的に購入する以外に選択肢はなく、こうした投資を排除できない。

日本国憲法は前文で、「自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」と宣言している。年金財源確保のためなら、他国で紛争を助長しても仕方ないということにはならない。国会でのルール見直しの論議が急務だ。(中根政人)

「それぞれの願望」

本日の東京新聞朝刊に、哲学者内山節氏のコラムが掲載されていた。
ごくごく当たり前のことしか書いてないのだが、日米軍事演習やイージス艦による迎撃システムなどの話ばかりを耳にする現在、新鮮な話のように感じる。それほど日本の政治や外交が流されているという証拠であろう。

 私は北朝鮮の一番の対応策は、無視することだと思っている。軍事的威嚇に対して、軍事的威嚇をもって対応すれば、戦争の危機を高めるだけでなく、相手の軍事力に一定の効果があることを、認めることになってしまう。そんなことより、原爆やミサイルを装備しても、何の成果もないということを教える努力の方が重要なのである。

それは、長期にわたる経済制裁などをつづけながら、無視された国として扱うということである。軍事力を強化してもの成果も上がらないという現実をつくりだす方が、北朝鮮の体制の危機を高めることになるだろう。

もちろん日本には拉致問題を抱えてはいるが、いまの北朝鮮にそれを解決する意志がない以上、そういうやり方が自分たちを孤立させ、危機に追い込んでいくのだということを、徹底して知らせるほかない。

軍事力に対して軍事力で対決したりもしない。さりとて実効性のある対話もしない。もちろんつねに情報を収集し、万が一にも攻撃されたときの対応方法をもつことは必要だろうが、徹底して無視するのが一番いい。

「原発本、薄れる興味 専用スペース設ける古書店が風化懸念」

本日の東京新聞夕刊に、東京の早稲田通りにある「虹書店」の記事が掲載されていた。
先日、反天皇制運動連絡会の天野恵一氏がカウンターに座っていた「寅書房」のことを10数年ぶりに思い出したばかりだったので目を引いた。

私の学生時代には、高田馬場までの商店街に、革新系の書籍を専門に扱っている古本屋として、谷書房、寅書房、虹書店の3店があった。確か革マル派と解放派とベ平連系の3派がそれぞれ贔屓にしている本屋だったと聞いた記憶があるが。。。

学生時代に溜め込んだ本がまだ本棚で埃をかぶっているので、どんどん読み直して(捨てて!?)いきたい。

「政治の怠慢 争えば害」

本日の東京新聞夕刊に、元駐中国大使の丹羽宇一郎氏の尖閣諸島に関する、素晴らしいコメントが寄せられていた。

丹羽氏は、石原東京都知事時代に危機感を煽り、民主党が出口への考えもなしに国有化を決めてから5年間、首脳同士の訪問もない状況になっていることへの打開策として次のように語る。

尖閣は日本の固有の領土で一寸たりとも譲るわけにはいかない。しかし同時に、領土の帰属は双方が納得する解決が難しい。俺の島だ、俺の島だと言い合いを続けても、争いや問題はなくならない。中国の公船が尖閣に来て周りをグルグル。これほど非生産的なことはない。だから今、できることから話し合いをするべきだ。

(具体的には)島の帰属問題は脇において、漁業協定、共同資源開発に向けた協議を始めるべきだ。漁業と資源で折り合いがつけば、無人島の帰属は大きな意味がなくなる。話し合いを始めるという簡単なことが5年もできていない。政治の怠慢だ。周恩来が言ったように「和すれば益、争えば害」だ。

(日中衝突の懸念について)尖閣を巡る戦争は起きない。尖閣周辺での漁業は燃料代が高くて日本から行く人は少ない。石油もよほど大量に採掘できないと採算が合わない。中国にとってもそんなに価値がある島ではない。もっと冷静に考えるべきだ。

(対中強硬論が目立つ中で)中国が嫌いとか厳しい意見を言う政治家は、中国の現状を知らない人が多い。実際に中国に行って、付き合ってみれば同じ人間。政治家の言っていることがおかしいと分かる。だから民間の人材交流が大切だ。

これまで尖閣諸島には石油や天然ガスなどの大量の地下資源が埋蔵されているという海底調査の結果で政治が動いてきたが、丹羽氏の言うように採算が合わないという事実が国際的に周知されれば、非生産的な小競り合いが無意味と分かり、生産的な国家間の話し合いが生まれてくるはずである。

また、2012年の尖閣諸島の国有化後、中国各地で反日デモが起きたが、尖閣国有化にこぞって反対する中国人の姿を演出するため、政府容認の下で組織されたとみられる。ネットを通じて集まった雑多なデモ参加者の一部が暴徒化し、平仮名やカタカナを看板に使っていた中国人経営の店が狙われた「同士打ち」の官製デモが大半であったようだ。

中国のメディア戦略を大々的に取り上げる日本のメディアにも問題がある。めちゃくちゃに破壊される商店のビデオ映像を何度も見せつけられては、中国に対する嫌悪感しか生まれない。草の根の民間交流の積み重ねが、たったひとつの映像でひっくり返されてしまってはたまらない。

尖閣諸島国有化
2012年9月11日、当時の野田政権は沖縄県尖閣諸島5島のうち魚釣島、北小島、南小島の3島を地権者から20億5000万円で購入、国有化した。中国は、周辺海域で石油資源埋蔵の可能性が指摘された後の1970年代に入り日本の領有を非難し始めていたため強く反発、公船による尖閣沖での領海侵入を常態化させ、中国国内では日本に対するデモが頻発した。日中政府は14年11月、不測の事態回避を目指すとの文書をまとめ、首脳会談も行ったが、国有化以降、中国の国家主席、首相の来日はない。