投稿者「heavysnow」のアーカイブ

『環境とつきあう50話』

森住明弘『環境とつきあう50話』(岩波ジュニア新書 1993)を読む。
牛乳パックや合成洗剤、トイレットペーパーなど身近なものを例に環境問題を中学生にも分かりやすく説明した本である。単に環境面への悪影響をかいつまんで解説するだけでなく、その歴史から環境運動、そして具体的な生活指南まで示している点が良い。

環境問題を自分の生活、仕事に関連づけて考えられるようになるには、なにか一つ自分がこだわるものとともに、上流・下流に旅してみることがたいせつだと、私は考えています。牛乳パックでいえば、原料はどこで取れ、だれが、どこで、どのようにつくり、売り、自分の生活や仕事の場まで来るのだろうと、まず上流に思いをはせるのです。つづいて、使用後、だれが回収してくれ、どこで処理され、最後はどうなるのだろうと、下流に思いをはせ、できたらほんとうに旅してみるのです。すると、最上流と最下流は山や海などの自然で、同じ場所であることが見えてきます。下流は見たくない世界,無関心の世界だったのですが、上流でもあるのです。生活や仕事のつけを下流に押しつけると、かならずつけが上流から還ってくることがよくわかります。

読みながら何となく「消費の疎外化」というキーワードが思い浮かんだ。我々は冷蔵庫でも洗濯機でも商品を消費し、使用する際、その全体像がつかめずに、部分的にしか消費に関われない。そして消費はそのまま浪費になってしまう。

『おたく少女の経済学』

荷宮和子『おたく少女の経済学:コミックマーケットに群がる少女達』(廣済堂出版 1995)を読む。
タイトルにもある通りコミケに集まる若者を社会学的に分析したものだ。例えば、やおい・ジュネ系漫画の増加の背景には、「真摯な恋愛の表現としてのセックス」、「セックスそのものとしてのセックス」を味わうのではなく、笑うためのセックスシーンを求めている女性の増加があると作者は指摘する。従来の男性主体女性客体ののエロ漫画とは一線を画し、「女という被害者意識」からの解放と「男という完全他者の苦しみ」を娯楽として味わえるポストを女性が獲得できるようになった社会状況を背景としている。消費文化の象徴といったパロディ漫画の隆盛に、消費に飽き足らずに創作意識を発揮せんとするおたくのありようを述べる作者の視点は暖かい。

『ボイス』

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アン・ビョンギ監督『ボイス』(韓国 2002)を観にいった。
映画版リングとポルターガイストを足したような大変疲れる作品であった。下4桁「6644」という番号の携帯に出た少女が悪魔のように変わり果ててしまい、その番号をかつて使っていた人物の跡を辿ると不思議な死を遂げていたというストーリーである。悪魔の声の正体が判明した後半部よりも、正体が分からないストーカー的恐怖に満ちた前半部の方が恐かった。携帯電話、メールを悪用したストーカー行為、盗聴行為といった現代社会も見えない恐怖に囲まれた生活をしているゆえか。

教育改革と子どもの行方

当代の論客 宮台真司講演会

教育改革と子どもの行方 ーー教育システムが阻害する想像力と、イラク戦争

5月18日(日)2003年
開場 午後1:30 講演 2:00-4:30
越谷市北部市民会館 劇場

一般:   1,500円(前売:1,300円)
らるご会員:1,000円(前売: 900円)
20歳以下:  700円(前売: 600円)

主催:特定非営利活動法人 越谷らるご
「越谷らるご」は「フリースクールりんごの木」を運営するNPO法人です。
((((((((((フリースクール生募集中))))))))))
お問い合わせ:Tel:048.970.8881 Fax:048-970-8882(土日:090.9374.9943)
埼玉県越谷市千間台西1丁目25-14 〒343-0041
e-mail k-rarugo@freeschoolnetwork.org
webpage http://www.freeschoolnetwork.org/koshigaya/rarugo.htm

『潮騒』

三島由紀夫『潮騒』(新潮文庫 1955)を読む。
神島を舞台にした18歳の少年の恋愛青春小説である。奇妙なほどに清々しい作品であった。純朴な少年と一途な少女、二人を暖かく見守る島人、そして雄大な自然といかにも箱庭的な世界の中で物語は綴られる。三島の系譜においては異色な作品であるが、たまにはこういう小説もあくせくする生活の中で、一服の清涼剤として良い。