『DNA・遺伝子の不思議にせまる本』

中原英臣『DNA・遺伝子の不思議にせまる本』(成美文庫)を読んだ。
ヒトゲノムビジネスや遺伝子治療について分かりやすく書いてあって面白かった。DNAの問題は様々な分野に関わっており、マスコミでの報道も散発的なのでなかなか実態が掴みにくかったが、少し頭の中で整理出来た。
ただ日本人の起源やホモサピエンスの誕生などがミトコンドリアDNAの分析で説明がついてしまうというのは味気ないと思った。神話や文学というものは、これまでの自然科学では解明されていなかった人類の誕生や人間心理の妙を創造力豊かに描いてきたのであるが、そうした人文科学が積み重ねてきたドラマが覆されるような思いがした。例えば柳田国男が伊良湖の浜辺で見つけた椰子の実から日本人のルーツに思いをはせたことや、聖書の創世記に描かれているアダムとイブの楽園の話などがすべてDNA解析によって否定されてしまう。特に日本人起源論については文化人類学・民族学・言語学・宗教学等、様々な立場から分析が加えられており、学会の大きな論題となっている。しかしそうした喧々諤々の論争も、ATLウイルスのキャリアの分析によって南方系古モンゴロイドと大陸系の新モンゴロイドの交配が日本人の祖先であるといったDNAレベルでの結論の前には為す術もない。確かにDNAの示す解答が正答なのだろうが、どうも割り切れないものを感じる。どうやら遺伝子学の発展は医学薬学に対する影響だけでなく、文学・哲学の分野に及ぼす風当たりも強いようだ。

……ちょっと酔っているので読みにくい文章になった。

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