江田憲司・龍崎孝『首相官邸』(文春新書2002)を読む。
官房長官や総理秘書官、総理補佐官等の内閣府の仕組みが分かりやすく説明されている。2001年2月からスタートした「中央省庁の再編」、特に「首相官邸の機能強化」「首相のリーダーシップ強化」の方針は、小泉総理誕生と相俟って表面上は思惑通りに進んでいるかのように見える。実際、小渕元総理以上に官僚の力がより強くなったという指摘はある。しかし、小泉総理以前は首相と自民党幹事長の料亭密約で政治が動いている感があったが、ここ最近は総理大臣と官房長官を中心とした、閣僚会議や内閣府内の「経済財政諮問会議」等の戦略会議での政策決定がマスコミを賑わすことが多い。政権与党がポストを牛耳っている委員会ではなく、首相官邸でトップダウン的に政策が決まる傾向が年々強くなっている。また裏を返せば、現在の自民党幹事長である山崎幹事長の影は、スキャンダルの影響もあってか、国民の眼からは薄いものになってしまった。各派閥の調整役であった自民党幹事長の存在感のない現状に派閥力学解消の象徴が垣間見える。
先週来、自民党総裁選を巡り、野中広務元幹事長の辞任など橋本派が大きく揺れている。元々、橋本元総理が種をまいた「官邸主導」型政治によって、当の橋本派が分裂に追い込まれるのは多少の皮肉であろうか。
『首相官邸』
コメントを残す