『わが性と生』

瀬戸内寂聴『わが性と生』(新潮文庫1990)を読む。
出家前は自由奔放に振る舞ってきた彼女ならではの性の体験や見聞をユーモラスに語っている。性に今だ拘泥してしまう出家前の瀬戸内晴美と、すでに性を達観している出家後の瀬戸内寂聴の往復書簡集という形式をとっている。
なかでも紫式部についての話が興味深かった。紫式部は漢学の素養があり、道長の娘の彰子中宮に「白氏文集」の講義をしたと言われているが、同時に彼女は漢文で書かれた閨房術の教典でもある「医心方」房内篇にも精通しており、彰子の性の教育係としても一役買ったと筆者は推測する。四十八手なるものもこの「医心方」房内篇から出ており、一条帝の気を引くために体位から呼吸の整え方から目の付け所まで懇切丁寧に指導したというのだ。これほどスケベな紫式部相手では、当時藤原道長や中宮彰子の敵役であった藤原道隆陣営は清少納言をもっても太刀打ちできないのは理であろう。

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