佐々木賢『資格を取る前に読む本』(三一新書 1996)を読む。
現在日本には司法試験や医師免許などの実用的な国家試験から、民間団体によるちょっと「?」な資格まで、その数ざっと1500種にも及ぶ。資格は一つの商品であり、資格を生み出す団体や組織が、利益拡大や組織防衛のためにあの手この手を使ってその有用性を喧伝する。つまり、資格は単に国民の知識や技能の習熟度を試すという側面だけでなく、資格を設けることで異業種の参入を排除したり、行政サイドが意図的にある資格を優遇することで新たな利権が生じるなどの政治的側面もある。また、脱偏差値の風潮の中、偏差値に替わる新たなモノサシとして位置づけられ、学生や社会人の進学や就職に対する不安な心理につけ込むなど悪徳商法的な性格も一部見受けられる。
また、資格を発行する公益法人の数に比例して資格が増えているという現状もある。一例を挙げると、厚労省、文科省、経産省それぞれが天下り先確保ために多数の財団を持っており、健康運動関係だけでも、「健康・体力づくり事業団」、「日本健康スポーツ連盟」、「日本健康開発財団」、「健康生きがい開発財団」、「日本ウェルネス協会」、「中央労働災害防止協会」、「日本体育協会」、「日本スポーツクラブ協会」、「日本フィットネス産業協会」といった財団がある。そして上記の財団全てが独自の資格を発行しているのだ。中には監督官庁のお墨付きを貰っているとはいえ、「温泉入浴指導員」や「健康運動士」など首を傾げてしまうものも多い。