山内祐平・中原淳・社会人大学研究会編著『社会人大学院へ行こう』(日本放送出版協会 2003)を読む。
社会人生活から大学院へという、これまでの日本では難しかった新しい学びのスタイルを分かりやすく紹介する。実際に大学院に通うに当たって退職や転職を経験した人へのインタビューも交え、大学院修了イコールばら色の将来ではないという現実も突きつける。
少子化で経営に苦しむ大学側とスキルを身に付けないと生き残れないサラリーマン、生きがいを見つけたいと願う青い鳥族たちの思惑が今のところ一致しているのであろう。特に研究者養成ではなく、社会人再教育の大学院がここ最近、ことに増えている。
長い人生、1年ないし2年自分の研究テーマを追うというのも格好いいとは思うのだが、仕事や家族のことを考えるとどうしても二の足を踏んでしまう。さて、どうするか。
日本人はとかく計画を立てたがる。何十年先まできちんと計画を立て、その通りに動かないと気持ち悪いという人も多い。計画を立てることは大事だが、さまざまな出来事をきっかけに計画を柔軟に変えていき、その過程を面白いと思えること、それが世界に対して開かれているということである。
今の日本には、社会人大学院へ行くことを大学に入る前から考えている人はほとんどいないだろう。つまり、社会人大学院へ行くこと自体が、人生における計画の変更なのだ。自分を信じ、将来の不確定性を無限の可能性に読み替えるところから、この冒険は始まるのである。