長谷川博『渡り鳥 地球を行く:セキレイ・ハクチョウ・アホウドリ』(岩波ジュニア新書 1990)を読む。
アホウドリ研究の第一人者として知られる東邦大理学部の長谷川教授の研究に対する熱い思いが綴られている。専門書ではなく、長谷川氏の子供の頃からの動物に関する飽くなき関心が、大学に入ってからは渡り鳥の生態の研究につながり、やがて、渡り鳥を保護するための自然環境保護に目が向けられていく過程が平易な文で書かれている。自然保護について世界中で政治的・経済的に喧しい論議が展開されているが、それには子供時分からの動物や自然に対する素朴な興味が醸成されなければ根本的な解決には至らないだろう。
こっちはえんえん飛行機を乗り継いでここ(シベリア)まで来たわけですが、鳥たちは平気で、自分の飛ぶ力だけでそれをやっている。日本で冬のあいだしか見られなかった鳥が、繁殖地で見られたのには興奮しました。鳥たちの生きている世界の立体像への、イメージが広がる感じでした。