『「殺すな」と「共生」:大震災とともに考える』

odamakoto

夏の6冊目
小田実『「殺すな」と「共生」:大震災とともに考える』(岩波ジュニア新書 1995)を読む。
本日の東京新聞夕刊に著者である小田氏の訃報が載った。小田氏は東大大学院を経て、ハーバード大学院に留学し、後にヨーロッパやアジアを無銭旅行した体験記『何でも見てやろう』が空前のベストセラーになり、65年には「ベトナムに平和を!市民連合(ベ平連)」を結成し、ベトナム反戦運動を展開し、後に憲法改正に反対する「9条の会」を結成する。また、95年には阪神大震災で被災したことから、被災者支援法制定を訴える運動を展開するなど、その人生はバラエティに富み、生涯反権力、市民運動を貫いた闘士である。
この著書では、阪神大震災での被災経験から、政治的に利用される「ボランティア」の危険性や行政の不備を糊塗する「危機管理」といった事柄へ疑問を呈し、そうしたデタラメがまかり通ってしまう日本社会そのものへの批判を読者に投げかける。少々古い本であるが、小田氏の主張がコンパクトにまとまっている良書である。

日本が敗戦によって植民地をすべて失ったことは、民主主義と平和主義の結合とあいまって、民主主義—それも理想的な民主主義の土台を得たことになります。しかし、それはあくまで土台でした。民主主義にしても、平和主義にしても、人びとのたえまない努力—ときには「たたかい」という激しいかたちをとる努力によってのみしか実現できないものだからです。

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