田中マリコ『文楽に連れてって!』(青弓社 2001)をパラパラと読む。
文楽とは人形浄瑠璃の一派で、大阪の竹本義太夫によって始められた大阪弁をもとにした古典芸能である。竹本義太夫の師匠が近松門左衛門であり、人形浄瑠璃の中心いってもよい。
最後に著者は専門家でもない自身が入門書をまとめた立ち位置について、最後に次のように語る。
古典芸能には、専門用語とか決まりごとに確固たるものがあります。文楽もきっちりした伝統と決まりごとがあります。(中略)けれど、完全にマスターしてから、という準備にとらわれていては、少しも前に進みません。ものごとは準備不足ではじめてもいいのだと、スリランカ仏教のえらいお坊さま、アルポムッレ・スマナサーラも寛容におっしゃっています。古典芸能は絶対間違えてはいけないというこの「権威主義」が若い人たちになんともいえない威圧感を与え、古典芸能からますます遠ざかるという悪循環に陥ってしまってるように思います。間違えても、デコボコでもいいから、古典芸能に関心をもとうではありませんか。私も知識もほとんどなくて、経験もただ見てただけという頼りないところからはじめました。それでもがむしゃらに書いてみたのは、古典芸能欠落世代でも日本の情緒とか、古典芸能の必要性を痛切に感じるからです。(中略)奥が深い古典芸能を完璧に理解するのには時間がかかることですが、とりあえず興味をもつこと。
新日本プロレスオーナー(現ブシロード代表取締役会長)の木谷高明氏の名言「すべてのジャンルはマニアが潰す」を思い出す。学校の授業も同じである。「実るほど頭を垂れる稲穂かな」と、つねに初心者、初学者の視点を共有していきたい。