仕事の出張で、早稲田大学の文学部戸山キャンパスにある記念会堂に出かけた。
卒業してから10年以上経つが、大学の施設の中に足を踏み入れることはこれまでほとんどなかった。本日は大学入試の日だったので、記念会堂のみ入構が認められていた。大学構内も周辺も新しいビルがスクラップアンドビルドで建てられ、当時の風景の記憶すらかき消してしまうほどの変貌ぶりである。毎週のように通った大隈商店街外れの魚料理屋「にいみ」も潰れていた。しかし、記念会堂の中は、時が止まったように昔のままであった。壁に貼ってある注意書きまでそのままであった。文学的な物言いをすると、昔の風景に迷い込んでしまったような錯覚すら感じた。
仕事が終わってから、正門前をぶらぶらしていたら、ちょうど試験が終わったようで大量の受験生の塊が正門から吐き出されてきた。昔のようなドンチャンのお祭り騒ぎはなく、子どもの姿を探す保護者ばかりが目立った。
試験が終わってほっとした様子の受験生も、後ろから次々に来る人波に流されながらバスや地下鉄の入り口に吸収されていった。
私自身も受験生の波にもまれながら正門から地下鉄早稲田駅まで歩いていった。今現在の私も、自身の受験した時の人波に20年近く流され続けているのかもしれない。後ろから人が来るから、前の人が歩くから、仕方なく歩みを前に進めているだけかもしれない。そんなことを考えながら早稲田を後にした。
昔と変わらない記念会堂のステージとその入り口の様子