岡本祐三『高齢者医療と福祉』(岩波新書 1996)をぱらぱらと読む。
いよいよ高齢者の介護が喫緊の社会問題となり始めた頃に刊行された本である。
ケアマネジメントやホスピス、グループホーム、ターミナルケアなどの横文字用語が分かりやすく説明されている。
刊行当時も、20年経った現在でも、施設に預けるのはではなく、子どもが親の介護に責任を持って当たるのが親孝行であるという「神話」が幅をきかせている。しかし、戦前までは「親孝行、したい時には親はなし」と長子は平均33.7歳で父親と死別し、37.9歳で母親と死別していた。さらに末子に至っては、平均21.4歳で父親と、そして25.6歳で母親と死別していた。それが現在ではそれよりも20数年遅れており、高齢者介護が戦前とは全く別次元の問題だということが分かる。そうした社会背景を無視して、子どもが親の面倒を看るのが当たり前だという易き論調には与したくない。
『高齢者医療と福祉』
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