荒田洋治『水を知ろう』(岩波ジュニア新書 2001)を読む。
冒頭、液体の水よりも固体の氷の方が密度が小さく、体積が大きいという点から、水の不思議に迫っていく。読みやすい文体なのだが、分子構造のモデル図から、水の分子の特性を説明するという内容なので、結局半分以上読み流すことになった。
それでも、H2Oの密度は摂氏0度以下ではなく、4度で最大になるとか、自ら氷になる際には”芯”になるものが必要なので、人口降雨にはヨウ化銀(AgI)が有効だとか、温度が低いほど、水は表面張力が大きくなってしまうので、洗濯の時は水温を高くしたり、表面張力を低下させる「界面活性剤」を加えたりするといった、「なるほどおぉ」と頷いてしまう話が多かった。
最後の章立てで、著者は水よりも沸点が高く、粘度が通常の水に比べて1桁以上も高く、密度が1.4g/㎤にも達する性質を持つ「ポリウォーター」なる代物が結局は真っ赤な偽物であったという事件に触れて、次のように述べる。小保方さんの「STAP細胞」の真偽で揺れる現在においても示唆的な内容である。
10年あまりの間、世界の学会を騒がせ続けたあと、この世から忽然と消えたポリウォーターは、多くの教訓をあとに残しました。新しい発見には、つねに客観的な検証が必要です。「どこで、誰が実験しても」その結果が「再現」できなければなりません。化学的な分析結果が必要ですが、それには、それぞれの時代に得られる分析技術を用いるに耐える十分な実験材料の量が求められます。ポリウォーターの場合には、不幸なことに、その条件がみたされていませんでした。その結果、化学的な裏付けがないまま、頭だけで考えた理屈が先行し、どんどん膨らんでいったのです。
(中略)科学は、つねに新しいものを目指して進歩しなければなりません。しかし、そのためには、しっかりした足場を固めつつ進むことが必要です。少なくとも、科学を考える場合には、最終的には自分の頭で納得できるかどうかがかぎです。たとえどんなに高名な先生の意見であっても、ただそのことに惑わされてはなりません。