浜矩子『「通貨」を知れば世界が読める:“1ドル50円時代”は何をもたらすのか?』(PHPビジネス新書 2011)を読む。
タイトルはいささか刺激的であるが、大英帝国からパックス・アメリカーナの時代の移り変わりを通貨政策という観点で歴史的に論じた上で、「ユーロ」の難しさ、次の基軸通貨の危うさを指摘した上で、朧げながらも今後のあるべき通貨の未来像を指し示している。かなり踏み込んだ論調で、著者の心意気がよく伝わってきた。
著者は、ベルギーの経済学者ロバート・トリフィンの「基軸通貨は希少性と流動性の両方を満たすことは難しい」という指摘を踏まえ、基軸通貨に頼ろうとすることそのものの危険性を述べる。そして、ドル安を助けるための日銀の量的緩和が生み出した「円・キャリートレード」がアメリカのブラック・マンデーを誤った形で助け、アジアの経済危機をもたらし、現在でも新興国の経済不安の少なくない原因となっていると説明する。最後に国域を越えて流動する単一通貨の問題点を押さえた上で、地球全体の統一通貨、国単位の通貨、そして地域通貨と3種類の通貨が併用される「3D」的な共存時代を唱える。
受験参考書のように説明が分かりやすい上に、主張や批判が研ぎすまされているので、読んでいて楽しかった。
『「通貨」を知れば世界が読める』
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