森岡正博『草食系男子の恋愛学』(メディアファクトリー 2008)を読む。
若い時に読んでおきたい本であった。恋愛の初手は女性の安心感であり、次の一手は共感である。そうした安心感を得るための話し方や振る舞い、そして共感を得るためのコミュニケーションが丁寧に説明されている。そして最後は恋愛の最後の決め手は人間的魅力であるという。人間的魅力といっても肩肘張ったものではなく、自身の弱さや夢に向かって進むこと、優しさであると述べる。
最後に筆者は次のように述べる。
いまから振り返ってみれば、あの暗黒の青春時代(親友も恋人もおらず、留年したため親との関係も悪化し、図書館で借りたレコードと名画座での映画三昧の日々)に食い入るように観続けた映画の体験こそが、現在の私の感受性の根本を形作っているということに気づくのである。あのときの映画体験がなかったなら、いまの私はなかったであろう。
10代から20代にかけての感受性の強い時期に、何の目的もなく観続けたがゆえに、それはいまになって私の感じ方や考え方の血肉となり、私の精神生活を深いところから支えていると言えるのである。
そのときに知らず知らずのうちに身についた感受性は、私のかけがえのない財産である。だから私はいま確信を持って言える。大学の授業に行かなくてよかった、映画ばかり観ていてよかった、暗い青春でよかった、と。