宮田光雄『生きるということ:読書による道案内』(岩波ジュニア新書 1987)をパラパラと読む。
著者の宮田さんはまだ存命で、旧制第三高校から東京大学法学部を卒業し、長らく東北大学で政治学史を担当し、法学部長まで務めた人物である。その著者がグリム童話とミヒェエル・エンデの『果てしない物語』、19世紀末のユダヤ人迫害を描いたフェーアマンの『隣の家の出来事』の3冊を紹介し、そこから自分自身への問い、他者への問い、さらには社会への問いについて説明を加えている。
「はじめに」の項の中で著者は次のように述べる。中高生向けに書かれた文だが、人生の折り返し地点を回った中高年こそ読むべき文だと思う。
私たちが、かけがえのない一回かぎりの人生の意味とほんとうの目的に出会うために、こころの旅にでなければならないということです。それは、私たちが、自分自身の心の世界に目覚め、自分とは何ものかを見きわめる旅なのです。それは、おそらくきみたちの若い日から始まり、大人になり、やがて死ぬ日までつづく生涯の課題なのでしょう。
しかし、そこでとくに大切なのは、この私たちの心の旅は、あらかじめ誰かによって決められた人生コースをたどる旅ではないということです。何か既成のできあがりの地図を頼りにするのではなく、自分自身で新しく路線を引きながらたどる探究の旅だということです。そして同時に、この旅は、私たちが自分のこころの世界から他者のこころの世界へとつながっていき、さらには社会のなかへ、歴史のなかへ参加していく旅でもあるということです。