日別アーカイブ: 2023年1月3日

『鉄道諸国物語』

小池滋編『鉄道諸国物語』(彌生書房 1985)を手に取ってみた。
鉄道史研究家として都立大学で長年教鞭を取っていた著者が、鉄道を舞台にした日本国内外の小説をまとめたアンソロジーである。志賀直哉の『網走まで』や芥川龍之介の『みかん』、ディケンズ『信号手』などが収められている。鉄道を舞台にした文学には、鉄道車内のボックス席という極めて狭いパーソナル空間と、鉄道が移動していく距離感や窓から広がる風景などの大きな空間の2つの世界観が共存する不思議な魅力がある。

解説の中で、編者の小池さんは鉄道を題材にした真の文学の名に値するものとして、中野重治の『汽車の罐焚き』を挙げている。私が卒業論文で一番に取り上げたかった作品である。当時の自分は、人間には御しがたい、しかし人間しか動かすことのできない蒸気機関車に着目した中野重治にこの上ない関心を持っていた。自分が評価されたような嬉しい気持ちになった。

「ブラジル ルラ大統領就任」

本日の東京新聞朝刊に、ブラジル新しい顔となった左派のルラ大統領の就任式の模様が報じられていた。経済優先でアマゾンの熱帯雨林の伐採を進め、コロナ対策を事実上放棄したボルソナロ前大統領に代わって、どれほどの力を発揮するのか注目の的である。

ブラジルは面積が851.2万平方キロメートルと日本の22.5倍もあり、人口も2億1400万人と日本の2倍近い。言語はポルトガル語で、カトリックが6割を占める。2021年の経済成長率は4.6%もあり、この成長が前政権の人気を支えていたのであろう。一人当たりGNIは7,518米ドル(2021年)とそこそこの数値となっているが、失業率も10%近くあり格差が広がっているという。

輸出品の大きな割合を占めるのが熱帯雨林下の鉄鉱石である。また、セラードと呼ばれるブラジルの中西部では大豆栽培と、大豆を飼料として牛肉の生産が盛んである。また、中国は大豆の輸入量で世界の6割を占めており、ブラジルで作られた大量の大豆が中国に輸出されている。

鉄鉱石生産量(2020)
1:オーストラリア 2:ブラジル 3:中国
大豆生産量世界ランク(2021)
1:ブラジル 2:米国 3:アルゼンチン
牛肉生産量
1:米国 2:ブラジル 3:中国 4:アルゼンチン

 

『ダンスでコミュニケーション』

香瑠鼓(KAORUCO)『ダンスコミュニケーション』(岩波ジュニア新書 2006)を読む。
著者の香瑠鼓さんは、早稲田大学社会科学部を卒業後、振付師として芸能界に関わるようになる。90年前後に活躍した女性アイドルユニットWINKの『愛が止まらない』やチョ・ナンカン(草彅剛)の『愛の唄〜チョンマル サランヘヨ』、香取慎吾の『慎吾ママのおはロック』などを手掛けている。さらに、今現在もブラウン管サイズで放映されているタケモトピアノのCMのダンスも指導している。

著者はダンスという言葉以外の身体コミュニケーションの可能性を信じており、芸能界だけでなく、障害をもった子どもたちの指導も担当しており、舞台を通じて子どものやる気を伸ばす教育も行なっている。そうした経験から、著者の持ち味である一人一人が主人公となるダンスが『慎吾ママのおはロック』に結実されている。

あとがきの中にジャニーズ事務所に所属していた飯島三智さんへの謝辞が述べられていた。