月別アーカイブ: 2023年1月

「近大キャビア身近に」

本日の東京新聞夕刊にクロマグロの完全養殖に成功した近畿大学水産研究所で、チョウザメの効率的な養殖の研究が進んでいるとの記事が掲載されていた。記事によると、紫外線をあてた精子を受精した受精卵に温度処理を実施したところ、メスしか生まれない「超メス」の染色体が含まれることが世界で初めて確認できたとのこと。全てメスだらけのチョウザメの養殖に成功すると、世界三大珍味の一つキャビアを2倍採れることができる。

全国海水養魚協会のデータを後掲するが、すでに日本の漁業生産額の23%が海面養殖業となっている。遠洋漁業や沖合漁業、沿岸漁業の海面漁業が軒並み右肩下がりのカーブを描いているのに対し、海面養殖業だけは生産量を増やしている。世界的な魚食ブームが広がる中で、近大キャビアが採算ベースに乗るようになると、国内消費だけでなく輸出にも回すことができるだろう。

養殖業の魅力と可能性について、生徒に説明できるように、しっかりと勉強していきたい。

『魔術師』

江戸川乱歩『魔術師』(ポプラ社 1970)を読む。
1930年(昭和5年)7月から『講談倶楽部』に掲載された小説を少年向けに書き直したものである。明智小五郎の妻の文代の過去に関する話である。タイトルこそ魔術だが、巧みな変装や大仕掛けのものはなく、犯人家族の娘と被害者家族の娘が生まれた時からすり替えられていたというトリックが鍵となっている。犯人家族に育てられた娘が、明智小五郎の助手となり妻となっていった。

「米、不法移民摘発強化」

本日の東京新聞朝刊より。
昨日の進学講習で移民と難民の違いに関する問題を扱った。「難民」は紛争や迫害、人権侵害などから逃れるために、仕方なく国を逃れることになった人たちを指す用語である。そのため、時には歩いて国境を越えることもあり、周辺国に緊急的に逃れるケースが多い。

一方で、移民は自らの意思で住む国を移動した人という区別しかないが、よりお金持ちの国(一人当たりのGNIが高い国)で働くために移住するケースが大半である。ベトナムやフィリピンから出稼ぎとして日本にやってくる若者をイメージすると分かりやすいだろう。

ただし、移民と難民の明確な線引きは難しく、世界各国で不法移民対策が難民切り捨てとなってしまうことも多い。今回の記事もバイデン大統領は不法移民の摘発を強化する一方で、国内が混乱しているキューバ、ハイチ、ニカラグア、ベネズエラの4カ国からの難民は毎月3万人を受け入れると表明したとのこと。合法的な移民の受け入れを具体的な数字をあげて実行するというのは分かりやすい。

日本も労働力不足があちこちで指摘されているので、積極的な移民政策に移行すべきだと思う。ただでさえ不明瞭な審査基準が指摘されているので、ざっくり毎月1万人といったように分かりやすい数値で実施すべきである。

『かな』

小松茂美『かな:その成立と変遷』(岩波新書 1968)をパラパラと読む。
後漢の光武帝が建武中元2年(57)に倭奴国王に贈った「漢委奴国王」印が示すように、1世紀頃から日本に漢字が入ってきた。しかし、当時は日本に漢字を理解できる人はなく、4世紀になって渡来人によって日本語を漢字で表記するプロジェクトが進められていく。そして8世紀には漢字を借りて日本語を書き表す一字一音表記の万葉仮名が定着していく。あとはひたすら実例が紹介されている。

著者の小松茂美氏は、私の学生時代の学部の入学式の講演者であった。式典の流れを無視して40分ほど古筆学について滔々と語るので、新入生だけでなく、壇上の教員まで居眠りを始め、挙げ句の果てに途中で学部長が小松氏にメモを差し入れるという事態となった。今ではぼんやりとして記憶も薄れているが、かなり印象的な光景だったと記憶している。

『星座12カ月』

冨田弘一郎『星座12カ月』(岩波ジュニア新書 1995)を手に取ってみた。
筆者が嘆くように、現在は建物や建造物のライトアップで、夜空の星々を眺める機会が奪われている。そのため、過去の人々が壮大な物語に託すほど現代人は星座に関心を持つことができない。私が星座に全く関心がないのも、現代社会のせいである。決して私の勉強不足ではない!