小松茂美『かな:その成立と変遷』(岩波新書 1968)をパラパラと読む。
後漢の光武帝が建武中元2年(57)に倭奴国王に贈った「漢委奴国王」印が示すように、1世紀頃から日本に漢字が入ってきた。しかし、当時は日本に漢字を理解できる人はなく、4世紀になって渡来人によって日本語を漢字で表記するプロジェクトが進められていく。そして8世紀には漢字を借りて日本語を書き表す一字一音表記の万葉仮名が定着していく。あとはひたすら実例が紹介されている。
著者の小松茂美氏は、私の学生時代の学部の入学式の講演者であった。式典の流れを無視して40分ほど古筆学について滔々と語るので、新入生だけでなく、壇上の教員まで居眠りを始め、挙げ句の果てに途中で学部長が小松氏にメモを差し入れるという事態となった。今ではぼんやりとして記憶も薄れているが、かなり印象的な光景だったと記憶している。