高槻成紀『野生動物と共存できるか:保全生態学入門』(岩波ジュニア新書 2006)を読む。
東京大学総合研究博物館で助教授を務める著者が、メダカに始まりツキノワグマやシカ、ラッコなどの保護について語る。著者は生態系全体を視野においており、人間が持ち込んだ外来種については厳しい姿勢を崩さない。
なぜ世界中の島々にヤギがいるのでしょう。それはじつは捕鯨のためなのです。ヤギは遠い昔に家畜となりました。粗食に耐え、乾燥にも強く、おとなしい性質なので、船に乗せて長い旅をすることもできます。このことを利用して、捕鯨業のために世界中の海洋島においていかれました。(中略)
私は小笠原の生態系保全の会議で意見を求められたとき、もちろんヤギを排除すべきだと主張しました。それが小笠原ん自然を保全するということであり、それが私たちの責任のとり方だからです。そこで私が強調したのは、ヤギを排除する以上、中途半端なことをしてはならないということです。駆除をする以上は根絶、つまりヤギの数をゼロにしなくてはなりません。というのは少しのヤギが残ると、食糧が豊富になり強い繁殖力ですぐに回復するからで、そうなるといつまでも駆除をつづけなければならないからです。