本日の東京新聞朝刊に、世界で一番寒い国として知られるロシア連邦内のサハ共和国の温暖化の実態が報じられていた。ケッペンの気候区分では亜寒帯冬期少雨気候(Dw)とツンドラ気候(EF)が入り混じっている国である。
月別アーカイブ: 2022年1月
『マンガと日本人』
福島章『マンガと日本人:“有害”コミック亡国論を斬る』(日本文芸社 1992)を読む。
執筆当時は上智大学に務め、犯罪心理学や精神鑑定などの著書も多い著者が、性的描写の多いマンガと少年の性犯罪の相関関係について、読者が飽きるまで分析を続ける。結論としてはアニメやビデオなども含めて性情報がオープンになればなるほど、性犯罪は減っていくという負の相関関係が見られるというものだ。性情報の規制をかけている当時の韓国で性犯罪の発生率が高く、デンマークの調査ではポルノグラフィを解禁と強姦事件の発生は全く無関係であった。
また、1990年代頃までは「漫画ばっかり読んでいないで勉強しろ」という言葉が当たり前のように流通していた。しかし、マンガを読む機会が多い青少年ほど活字に触れる機会が多いというデータも紹介されている。
著者は「有害」コミック規制運動に対して、真っ向論陣を張っている。
私は、精神科医として多くの性犯罪者、非行少年の精神鑑定を行った経験を持つが、犯罪・非行の原因はきわめて多元的であり、なにか一つの原因に帰することができる方が稀である。非行の原因は、家族的な背景、本人の資質やパーソナリティー、友人関係、価値観や意識、生活史の偶発的な出来事など、きわめて多次元的な要因によって規定されている。メディアとの接触だけで起こった非行というものを、私はまだ鑑定したことがない。
私の印象では、メディアの影響を強調するのは、取り締まり強化の大義名分を社会的に認知させるための、警察当局の意図的な演出や情報操作に、あまりにもナイーブなマスコミがおどらされた結果である。日本の警察は、戦前には国体の尊厳や護持という名目で、思想犯や政治犯の取り締まりなど、思想統制を行っていた。戦後は、思想の統制はできなくなったが、今度は性の領域で、「わいせつ」という概念を十分に利用して市民生活の私的領域に介入しようとしているのである。これは、警察官僚が伝統的に持つ本能的ともいえる情熱なのである。
「世界遺産条約50年」
「氷河解け…半世紀ぶりに砂漠に湖が出現」
本日の東京新聞朝刊に、チベット高原の氷河が解けて、チベットから流れ出す河川の流量に大きな変化が生じているとのこと。
チベット高原は、約2,000万年前にユーラシアプレートにインド大陸がぶつかってできた、世界で最も若い褶曲山脈である。日本の面積の6倍近くの広さがあり、平均海抜は4000メートルを優に超える。南縁は平均海抜6000メートル前後となる、中国やインド、パキスタンの国境未確定地域にほど近いカラコルム山脈や、中国とネパールの国境となっているヒマラヤ山脈となっている。インド大陸はユーラシアプレートとぶつかった後も動きを止めず、大陸の間にあった深海の底を9000メートル近く持ち上げたことになる。ヒマラヤ山脈は今でも、年間10mmという驚異的なスピードで成長を続けている。
また、チベット高原は、高原に蓄えられた万年雪や氷河が徐々に解け出すことによって、中国を流れる黄河や長江、東南アジアを流れるメコン川、インドを流れるガンジス川、ミャンマーを流れるエーヤワディー川、パキスタンを流れるインダス川の源流ともなっている。特にパキスタンは乾燥地帯であり、外来河川となるインダス川の豊富な水で古代文明を築いてきた。パキスタンはインダス川の水で米も小麦も生産することができているので、現在人口2億2000万人いるにも関わらず、食料自給率が100%を超えている。
しかし、温暖化によってチベット高原の氷河が一気に融解してしまった場合、大規模な洪水を引き起こすだけでなく、その後の水の慢性的な供給不足に陥ってしまう。稲作にとっては大ダメージである。そうなると、パキスタンだけでなく、人口14億人の中国、インドシナ半島のラオス、タイ、ベトナム、カンボジア、数年後には人口世界第1位となるインドの農業も壊滅である。
地球温暖化というと、南極大陸の氷河が解けて、海面が上昇し、ツバルやキリバス、モルディブなどの環礁の島々が海に沈んでしまうというのは中学校でも学習するところである。しかし、山岳氷河の融解は、地球の人口の半数をしめる5つの河川の沿岸国を死に追いやる。こうしたチベとを中心においた水問題にも注目していきたい。
ちなみに氷は「溶ける」ものだと思っていたが、新聞記事では「解ける」であった。
ネットで調べてみたところ、自然現象で暖かくて氷が自然にとけ出して水になってしまうような場合は「解ける」を用い、人為的行為でお湯やバーナーなどで急速に氷をとかすような場合は「溶かす」を用いる。つまり、「解く」は自動詞として、「溶く」は他動詞として用いるという決まりがあるとのこと。